2017年3月1日水曜日

浦河から考える日高の広域公共交通試案(3)

日高の広域公共交通を浦河から考える第三弾です。
その後、日高線は沿線7町長が全線の復旧を断念し、一部区間を復旧してDMV運行の可能性を模索する方針になりましたが、ここでは引き続き淡々と必要な公共交通について考えていきたいと思います。

前回までは、地域に最低限の公共交通が必要であることと、その「最低限」の補助線として3時間の「日帰り圏」をひとつの例として示しました。
浦河からは現在、公共交通では都市部へ日帰りでアクセスできない状況が続いています。


「特急うらかわ号」を増えせば日帰り圏は解決するのか?


今まで浦河から最寄りの都市であった苫小牧市。
JRで2時間半でしたが、代行バスだと4時間以上かかります。

ただし、もうひとつ選択肢があります。
前回もお示しした、浦河から苫小牧経由で新千歳へ向かうバス「特急うらかわ号」です。
一日一本しかありませんが、3時間で行くことができます。

「じゃあ単純にこの3時間で行けるうらかわ号増便すればいいんじゃないの?」
と考える方もいるかもしれませんが、本当にそれで解決するのでしょうか。

こちらを御覧ください。

うらかわ号所要時間代行バス所要時間JR(H26)所要時間
浦河駅6:549:308:36
静内駅7:5060分10:5686分9:3559分
鵡川駅8:5060分12:55119分10:4267分
苫小牧駅9:4555分13:3338分(JR)11:1735分

特急うらかわ号日高線代行バスJR日高線(運行時)のダイヤと所要時間の比較を表にしたものです。
ぱっとみて、代行バスの所用時間に目がいきます。
ここの浦河-静内間に時間がかかる理由は、国道から山中の駅にぐるっと迂回して行くのでわかりますね。

しかし、同じようにほぼ国道沿いの静内-鵡川間もかなり時間がかかっています。
なぜでしょうか。

乗客の乗降車にも時間はかかる


単純な鉄道と自動車の速度以外にいくつか要因があると思いますが、実際に乗ってみるとわかってきます。
ひとつはこの区間も一部国道から駅に向かう道にはいっていくこと、さらに静内駅での接続に余計に時間がかかること、もうひとつは駅とは別に高校生のために途中の高校で直接乗降車しているためと思われます。
が、その要因以上にかかってしまっているようです。

それが途中での乗客の乗降車時間です。
あまり人が乗っていないと言われる日高線ですが、本来300人の輸送密度がある区間です。特に静内以西は比較的人口も多い区間です。
早朝に出発して乗り込む乗客のほとんどが苫小牧で降車するうらかわ号と違い、日中に区間内の乗降車がちょこちょことある代行バスではこの点が異なります。
ですから、そのあたりも考慮にいれると単にこの「うらかわ号」のようなバスを増やしても3時間にはなりません。おそらく全体で20分は超過してしまうはず。
というか、それなら3時間半で行ける札幌と変わらなくて、「最寄り」ですらないのですが...。

このようにDMVでも、そのままバス転換しても、この日帰り圏の問題はおそらく解決できないだろうと思います。
また日高道延伸をその代替とする考え方もありますが、公共交通の視点で言えば、残念ながら所要時間に寄与しません。
その日高道、門別から静内までの延伸に1,500億円かけて30分ほど短縮されるのですが、JR日高線は復旧に150億円もかからず2時間の短縮効果(浦河-苫小牧間、代行バス比)がありました。
沿線7町長には今まで復旧に向けて取り組んできていただきましたが、全線復旧は断念とした判断は大変残念に思います。

とはいえ、ここからどうするかを考えていかなければなりません。
試案と言いつつ現状の整理で3回もかかってしまいましたし、その間に状況も変わってきてしまいましたが、次からいよいよ本題に入っていきたいと思います。