2016年8月31日水曜日

「一人足りとも置き去りにしない」と言い切れるか?秋田県大館市に学ぶ教育

少し前の話になりますが、8月24日(水)に「秋田県大館市の教育に学ぶ」講演会に参加してきました。
大館市の教育委員会から講師をお招きし、堺町小学校5年1組の子どもたちを対象にした模擬授業が行われました。

貝森教育研究所長による模擬授業

秋田県大館市から学ぶ


内容は奇数と偶数の違いについてでした。
おそらく毎日の教育現場からは離れた立場にも関わらず、ついさっきランチを一緒にしたばかりの子どもたちの心をしっかりと掴み、全員がついてこれているかどうかを丁寧に把握し、時間通りに終わらせる教師としての確かな技術が素晴らしかったです。

今年、浦河町は教育の先進地である秋田県大館市との交流プログラムをいくつか実施しています。浦河の教育をどうしていけばいいのかを考えるヒントを学ぶ目的です。
秋田県内でも南北で学力に大きな差があったそうですが、学力数値を追い求めるのではなく、地域を担う未来の大館市民をいかに育てられるかを考え取り組んできた結果、学力も追いついていったようです。

残念ながら今回はその後、所用のため途中退席してしまったのですが、7月24日(日)にも発達支援システムに関する講演会に参加したところです。
大館市は6年間かけて苦労しながら今の教育をつくりあげてきたと聞いています。

大館市の教育の特徴


その成果なのだと思いますが、もっとも印象的なのは、子どもたちの現場にかかわるみなさんが大館の子育てはかくあるべきという姿を、自分の言葉でわかりやすくお話になることでした。

7月に開催された講演「どこでも支援教育・だれでも支援教育」

その内容はふるさとに生きる基本を学ぶ「ふるさと教育」、そしてその上に自らの生き方を描く「キャリア教育」を通じて「未来大館市民」を育成するというものです。
これだけ言うとすぐに真似することもできそうなものです。

しかし、単に掲げている空疎な言葉ではなく、こうした基本的で長期的な考え方を少なくとも要職にある職員同士で共有し、それぞれの立場で何をしなければならないか、しっかり考え抜かれていることが伝わってくるのです。
これはそう簡単なことではないように思います。しかしまた、こうしたことを徹底していかなければならないのだろうとも思います。

また私が個人的に感銘を受けたのは、理念のひとつでもある「一人たりとも置き去りにしない」教育という考え方と実践でした。
これは昨今ではややもすると、理想論に聞こえてしまいがちな言葉ではないでしょうか。それを形にして実践しているところに大館市のすごさがあります。

教育に関しては門外漢ではありますが、厚生文教常任委員になったことや、最近参加している札幌の勉強会でも教育が主なテーマなこともあり、もっと掘り下げて勉強していきたい分野です。


2016年8月29日月曜日

百年の計としての鉄道存続と路線廃止問題を巡る素朴な疑問

昨日8月28日(土)はふるさと銀河線沿線応援ネットワーク副代表中川功さんをお招きしした「JR日高線を守る会」の講演会をお手伝いしてきました。

北見から公共交通でお越しになった中川功さん

鉄道がなくなった後の地域


北見-池田間を走ったふるさと銀河線が廃止されて早10年。

沿線では鉄道がなくなったあと、地価下落や人口減少のみならず住民の間に大きな喪失感があったそうです。病院に通うお年寄りが住めなくなり、これが原因で札幌へ引っ越した方もひとりやふたりではないようです。
また各沿線自治体では、鉄道に代わる代替バスの関連費用だけでそれぞれ年に1,000万円前後の計上経費が自治体負担になっていることをご報告いただきました。

百年の計としての鉄道存続


こうした地域の実状を踏まえ、日高線も残すべきとのお立場から、路線維持のための一般財源ではない新たな財源確保と住民の利用促進案を提言いただきました。
一般の方にはちょっと難しい内容だったかもしれませんが、沿線自治体の行政職員や議員も多数来場しており、今後の参考になったのではないでしょうか。

地域の先人たちが百年前、必死に陳情して何とか実現した鉄道誘致。
そして脱獄囚がみせしめのために生き埋めにされながらつくられた北海道の鉄路。
これを今、そしてこれから百年をどうするのか。
物事の原点に立ち戻り、そして自分の次の世代も含めた時間軸で考える大事な視点をいただきました。

会の村井代表も「被災以来、一年半にも及ぶ代替バス運行といういわば社会実験中の日高線。苫小牧-様似間は3時間から5時間になった。バスには乗れない事情の方もいる。
そうしたことにより、バスになっただけで輸送密度が300人から200人以下に激減。バスではダメなひとも大勢いる
と力強いメッセージを会場に投げかけていました。

管内各町から140名の方がご来場

140人が来場して関心の高まりを感じました。
会へも4万円のカンパが集まったと聞いています。
報道でもとりあげていただきました。

鉄道を巡る論議に関する素朴な疑問


あらためて鉄道は特殊な交通機関だと感じました。
「赤字だから」「あまり人が乗ってないから」廃線でもいいというのが当たり前のように言われることに、「本当にそうなんでしょうか」と素朴な疑問を感じます。

道路は利用料がかからないわけですから、言ってみればすべて赤字です。
その金額も、鉄道とは桁が違います。
にもかかわらず、どんなに僻地の道路を整備しても誰も文句を言いません。
北海道新聞の藻谷浩介さんの記事によれば、有料の高速道路にしても維持経費は鉄道の10倍以上だそうです。

というと、したり顔で「道路と鉄路は事情が違うんだから別の問題」と仰る方もいますが、その「事情」に賛成ということでしょうか。鉄道は北海道から一切なくなってしまってもいいのでしょうか。
「現実はこうだ」ということと「現実をこうしていきたい」ということは別の問題です。

「ほとんど利用者もいないからいいじゃないか」と言われてしまいますが、先日台風の被害で止まった東京都内の路線の避難客が6人ときいてびっくりしました。
利益の出せる鉄道網が世界中にどれほどあるものなのでしょうか。


2016年8月8日月曜日

価値を生み出した結果としての活性化とその指標をどう考えるか

価値を生み出した結果としての活性化


最近、「活性化」という言葉についてあらためて考えています。
「活性化」のために何かをするというのは違うのではないか、と。

自分のまちが誰に貢献できるのか。
北海道のために、日本のために、アジアのためにこのまちは何ができるか、どういう価値をもっているか、お役に立てているか。
だから「活性化したい」ではなく、「私たちはどうお役に立てますか」というのが正しいのではないか。その結果として活性化がついてくるのではないか。

7月28日、29日の2日間にわたって行われた全国若手市議会議員の会の研修会に参加してきました。
冒頭の話は、同じ会員でもあり、今回講師でもあった青山剛室蘭市長が講演で語っていたことです。

札幌市の委員会会議室で講演する青山室蘭市長

まちづくり活動や自治体行政に関わっているひとは誰しも感じつつも、なかなか言葉にできなかったり、実践できなかったりする考え方ではないでしょうか。
あらためてその重要性を確認しました。

活性化の指標としての資産税・住民税


では、その考えを実践するために行政は何をすればよいのか、どう効果を測定をすればよいのか。
ヒントになるようなお話がいくつかその前段にありました。

青山市長は固定資産税と住民税をみていると仰っていました。
実際に室蘭では、ある特定の年代層で生活保護の割合が下がり、市民税は増加する傾向があるそうです。これをひとつの指標として捉えているというお話でした。

漠然と「雇用をつくる」というわけではなく、室蘭というまちの優位性を一層高められるようないくつかの中心的な柱を持つことと、市民の生活の質が向上するようなきめ細やかな対応をすることと、このふたつの考え方を大事にされているように理解しました。

またもう少し踏み込んでお話されていたのが、このことと観光との関連のお話でした。
観光を推進してもあまりこの資産税や市民税に反映されてこないのではないか。
この研修会とは別に、札幌時代にお世話になった方とも北海道における観光についての意見交換をしてきたのですが、同じような話になりました。
ニセコや富良野・美瑛のような超有名観光地は別かもしれませんが、それらの地域は自治体の政策として成功したわけではなく、むしろ自治体は観光地化の対応に追われているといったほうが正しいのではないでしょうか。

なぜ観光をするのか?
観光によって何を得たいのか?

観光に限らない話ですし、具体的な目的や目標は地域によって異なってくるはずですが、このあたりをはっきりさせないと議論が空回ってしまうとあらためて感じた次第です。
こうした研修会や勉強会には、都合のつく限り参加しています。


2016年8月2日火曜日

日高地方で子どもを産める環境を残すために。他、浦高通学費補助の調査へ

7月26日(火)本議会の後、厚生文教常任委員会もありました。そのご報告です。

浦河高校通学費補助の請願


6月議会で請願のあった浦河高校通学費補助について、今後どう取り扱うかを議論しました。
現状の浦河高校への通学生の状況や他町村での事例を調査し、検討の元になる資料をもとに議論を進めることになりました。

上の世代からは自分の子どものことは自分たちで何とかしてきたという声もあるようですが、まずは実状を知った上で柔軟に考えるべきです。

まちなか元気ステーション


何度か議論されたまちなか元気ステーションですが、質疑はある程度終えたため、設置予定地を委員会として視察し、確認してきました。


その後委員会に戻り、持ち帰りだった各会派の意見集約の結果について報告がありました。
懸念事項だった見取り図の改善案や新設と移設との予算比較について、意見はいくつかありましたが、大きな反論はありませんでした。これをもって当委員会としては審議終了です。この後、総務産業建設委員会に差し戻されます。
なお、議会として承認された後に委託して設計される実施計画はしかるべきタイミングで委員会にまた諮っていただきます。

新型インフルエンザ等対策行動計画


国をあげた新型インフルエンザ等の対策のため、2013年に特別措置法が施行されました。
この法律によって各自治体も対策行動計画を策定しなければならないため、浦河町もつくりました。

目的は、急激な流行をできるだけ遅らせて、さらにそのピーク時の規模を小さくすることです。
細かいことは分厚い資料に色々と書かれているのですが、要するに国が緊急事態宣言を発令した時は自治体でも対策本部をつくり、関係者としっかりと情報を共有し、住民への的確な指示を徹底するとあります。

正直な話、実際に緊急事態宣言が発令された場合には、こうした細かい計画は通用しないと思っています。想定外の事態では上意下達は通用せず、多くのことは現場で判断し、むしろ下から上に、より高度な判断を要求するべきだからです。
義務なのでつくらなければならないのはわかっているのですが、震災を何回経験してもこうした国の仕組みはなかなか変わらないものですね。

浦河日赤の産婦人科の今後


その他の案件で私から問題提起させていただいたのが、浦河日本赤十字病院の産婦人科の今後についてです。

現在、浦河日赤では交代制の医師1名と6名の助産師さんが24時間体制で日高管内唯一の産婦人科を担っていただいております。
ただ、この6名はすべて50代で、内2名は道外から協力してきていただいている状況と伺っています。現在は年間約100人ほどの赤ちゃんがここで産まれています。

6月上旬の報道によると、北海道庁と一般社団法人WIND(北大産婦人科医局を法人化した組織)が浦河日赤を含む道内5病院で産婦人科医の派遣についての協定を結び、体制づくりを進めるとありました。
しかしこの支援協定の期間は2年ですし、助産師は全国的に不足しており、全員が50代であれば定年退職後の担い手のことも考えなければなりません。また24時間体制のためには本来7名の助産師が必要とも聞いており、中長期的に何らかの対応が必要なのではないかと考えています。

町として現状をどう捉えているか、また今後の対策について考えているのかをお聞きしました。
現状は同じく把握しており、あらためて町の考えを委員会でも報告するとの答弁でした。

地域医療の問題は深刻で、松前町では議会との対立により院長含む2名の医師が退職の見込み、小樽市でも後志管内唯一の周産期母子医療センターから4名いた産婦人医が全員退職の見通しです。
地域医療の崩壊がよく言われていますが、地域から理解がないまま現場が黙々とぎりぎりまでがんばり、その積み重ねの上に何らかのきっかけである日限界がくると聞いています。

浦河日赤は浦河のみならず、日高東部全体の周産期医療を担っています。周囲でも里帰り出産もいくつかありました。
ただ何でもお願いをするだけではなく、地域として早いうちから対策を検討するべきです。

まずは関係者がテーブルにつき、現状を話し合う場が必要ではないでしょうか。また住民としても地域医療に取り組んでくださっている医療現場のみなさんと対話する場を模索すべきではないでしょうか。
こうした問題も少しずつ勉強中です。


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