2017年9月25日月曜日

タトゥーはダメ?浦河の寛容さを形に

みなさん、タトゥーをどう思いますか?タトゥー。
入れ墨といったほうが伝わるかもしれません。

足元にはいってるのがタトゥー(フリー画像です)

感じ方としてはおそらく「ヤダ、コワイ」か「別に」かどちらかだと思います。
そしてただ道端ですれ違うだけじゃなく、タトゥー入っている人と温泉や銭湯で一緒になったとしたらどう感じますか?
今回このタトゥーについて議会でとりあげました。

賛否両論のタトゥーと公衆浴場の関係


とりあげたんですが、実はこれ、議会でやるかどうかはしばらく迷ってました。
しばらくというのは一年くらいなんですが、というのも私が個人でやってる意見交換会ではしばしば話題にしてきたのです。
想定した通り賛否ありました。賛否あると正直気が重いものです。

ですが、今まで否定的な考えだった方が「いいんじゃないかと思うようになった」と心変わりしたようで、私もとりあげてみる気になりました。
その方が意見を変えたひとつのきっかけは、とある新聞記事でした。

ファッションや風習などでタトゥーを入れた外国人観光客が北海道内で増加していることを踏まえ、タトゥーをした人の利用を容認する温泉やスーパー銭湯が増えてきたという内容でした。
タトゥーと言えば、道内の入浴施設で、顔に入れ墨をしたニュージーランドの先住民族マオリの女性が入浴を拒否され話題となったのも記憶に新しいところです。

国も東京五輪を目前に控えていることもあり、シールで隠したり、利用者の少ない時間に入ってもらうなど、観光庁が具体的な対応案をとりまとめ、各施設に対応改善を呼びかけているところです。
最近では若い人のいわゆるファッションタトゥーも増えていますし、ただタトゥーがはいっているからといって入浴を断るのは人権の視点からもいかがなものかと、それぞれの入浴施設が様々な取り組みをすすめているところです。

で、私の提案というのは、浦河が全国に先駆けて、自治体として公衆浴場におけるタトゥーの対応について、独自のルールや制度をつくってはどうかというものです。

なぜ行政でルールをつくるべきなのか


まず浦河の現状ですが、3ヶ所ある公衆浴場のいずれも、タトゥーの人も事実上OKです。実は。
ただ、嫌がるお客さんからクレームがごくたまにあり、クレームがあればもちろん施設側も何らかの対応をせざるを得ません。
それも具体的に何かトラブルが生じているわけではなく、「タトゥー入ってる人がいたんだけどどうなってんの?」という内容です。
タトゥーのお客さんも、嫌がるお客さんも大事な施設にとっては、現場で大変難しい微妙な対応を迫られるわけで、何らかのルールがあったほうがお互いよいのではないでしょうか?

また、最近観光誘致も進めている浦河ですが、つい最近も台湾の方を呼んだと聞いています。
台湾の若い人にもタトゥー大人気で、結構入れてる人いますよね。知ってる台湾人でもいます。
せっかくこちらから呼んで来て頂いているにもかかわらず、「タトゥーはダメなんです」ではちょっとかわいそうです。

あるいは若い人の移住・交流やUIターンを促進する事業も様々進めてますが、タトゥー入ってる人は歓迎されないのでしょうか?
正確な統計はありませんが、私の推計では道内でも若い人のうちざっと1万人くらいはタトゥー入ってる人がいると思います。そういう方は対象にならないのでしょうか。

行政で進める事業と現実が矛盾するわけですから、今の時代にあわせて、行政が責任をもってそのあたりの対応も考えるべきだというのが私の考え方です。

浦河だからこそやる理由


今までタトゥーはダメだというのが基本だったので、「どうせ特に田舎はダメなんでしょ?」と思われるのが普通だと思います。
しかしながら現実、浦河のすべての入浴施設でタトゥーの方も入ってます。
たまに行くだけの私でも見かけたことがありますが気になりません。
むしろ寛容で素晴らしいと思います。
こうした現状も踏まえて、浦河が全国に先駆けてルール作りに取り組むのはどうでしょうか。
条例のような形に落とし込めるとよりわかりやすいかもしれません。

昨今の国際情勢をみましても(国内もそうですが)異なる価値観に対しての不寛容が強まってるように感じます。
そういう時代だからこそ、浦河の強みであるこの「寛容」を形にし、世の中に示すことに大きな意味があるのではないでしょうか。

戦後だけをとってみても、樺太からの引揚者、各官公庁の転勤族、港へは全国各地の漁船とその乗組員、牧場へは世界中から牧夫、その他、障害ある方々や多様な技術や才能を持った移住者等、浦河は小さなまちながら大勢の「よそ者」を受け入れてきました
知人も「仕事柄、日本のあちこちの田舎に行ったけど、はじめて田舎でもここ浦河なら住めるかなと思ったよ」と仰ってました。
もちろんその時々でトラブルや問題もあったようですが、それも含め受け入れていく、懐の深さ、寛容さが浦河の良さだと思います。

中には「ごめん、そうは言ってもやっぱりヤダ」「外国の文化もわかるけど、そもそも日本の文化ではタトゥーはダメなんだから従ってもらうべき」という意見もあろうかと思います。
なるほど。
しかし、その文化、本当に昔からそうだったのでしょうか?

タトゥーNGは日本の文化?


明治初期。
近代化を進める中、政府はある日突然入れ墨を禁止する法律をつくりました。
それまで江戸時代、特に中期以降、肌を見せる飛脚やとび職、火消しの方々を中心に入れ墨文化が大変発達し、入れ墨をしていないとむしろかっこ悪い風潮があったようです。
この文化や価値観は、武士階級にも及んでいました。
それを「近代化した欧米ではそういうことしない。日本も近代化が必要だ」みたいな感じでいきなりダメということになりました。

というわけで、日本でタトゥーがダメな文化ができたのはわずか150年ほど前の話がきっかけで、しかも言ってしまえば海外の影響です。
それまではむしろ江戸を中心にタトゥー文化が花開いていたといえるのではないでしょうか。
ちなみにこの禁止令はいささか日本側の自意識過剰な対応で、むしろ海外の船乗りや王室の中には好んで日本の伝統技術による彫り物をいれた方々もいらっしゃったようです。

しかも北海道においては、アイヌ文化・歴史と言う視点もあります。
アイヌ文化では神の象徴として顔や手の甲に入れ墨する文化がありました。
これもやはり明治初期、国から一方的に禁止令が出ます。

来年北海道は命名150周年。
「共生」をキーワードとして、歴史や文化を捉え直すとしています。
道内でも比較的はやくから和人もはいり、温暖な気候故に多数のアイヌの方々が暮らしてきたこの日高の地だからこそ、歴史の問題を再考するいい機会ともなるのではないでしょうか。

ちなみに「入れ墨」という呼び方は、刑としてのそれが由来で、あまり好ましくないだろうと思ってます。
一般的には「文身」などと呼んでいたそうで、こちらの方が「タトゥー」のニュアンスに近いかもしれません。

様々ご意見もあるでしょうし、議論に時間をかけたほうがいい問題だと思います。
しかしこれもまた前回の記事と同様、他所からきた立場として思うことを率直に質問の形にできた自分らしい質問だったかな、と思っています。

池田町長は「親からいただいた大事な身体に傷つけるのはどうか」と仰っていましたし、もしかすると私が思ったよりは浦河は寛容ではないのかもしれません。
ただ、まずは行政とも「ただタトゥーはいってるから入浴はダメということにはならない」という基本的な認識は共有できました。
時代の流れを先取り、浦河の良さを具体的な形にしていくひとつの提案として受け止めて頂ければありがたいところです。