2016年3月25日金曜日

予算議会終了、老朽化対策や道の駅整備など行政課題は山積み

第2回浦河町議会(定例会)が3月22日(火)をもって終了しました。
15日間の会期(内、休会が9日間)で、追加議案を含む合計38議案を審議し、全会一致で議決されました。

予算議会は想定以上の資料の数でした

3月の予算議会は相当な量の議案があり、大変さをあらためて実感しました。
報告も難しいところですが、予算概要は以前の記事で、全体の概要は次回の「議会だより」でご覧になれると思いますので、今回は他の議員の一般質問からいくつかトピックを取り上げてみたいと思います。

❏ 学力向上の鍵はタブレットか


全国でも下位にある浦河の学力向上の議論がされてきました。

今回、その目玉になりそうな全小中学生へのタブレット導入。
一般質問では木下議員と斉藤議員もとりあげ、予算質疑でも意見が出ていましたが、結果的には導入が決まりました。
まずは好成績の子ども向けというよりも、なかなか通常の授業に追いつけていない子どもたちに、学ぶ楽しさを知ってもらうきっかけづくりとしての意味合いとのことです。

9月からの導入に向けて、現場の先生方とも推進委員会を設けて活用方法について議論されていきます。
導入方法に再考の余地があるのではないかという意見に対しても、さほど再検討するつもりがなさそうなので心配しています。
リース料は5年間で7,500万円の予算ですので、真剣に取り組んでいただきたいです。

なお、文科省が実施した小中学校でのタブレット導入に関する報告書はこちらですので興味ある方はご覧ください。

- 学校教育 - ICTを活用した教育の推進に資する実証事業 


さて、ここであらためて考えてみたいのですが、学力向上のため教育行政ができることは何なのでしょうか。
実はなかなか難しい問題です。

私がむしろ可能性を感じるているのは、昨年実施した成績が全国上位である秋田県との交流連携によるところです。
今年も講師を招聘した勉強会や現地への教員の視察研修が盛り込まれています。

昨年の視察にも同行した岡内教育長の説明によれば、秋田では何か特別なことをしているわけではないそうです。
例として学習時間ごとのゴールを明確にする取り組みを取り上げていましたが、結局は日々の地道な改善の積み重ねではないでしょうか。
他所の地域での考え方のよいところを学び、活かしていく機会になるのではないかと期待しています。

また昨年浦河町と友好都市提携した熊本県天草市は、全国平均学力よりも高く、特に河浦地区は一層高い結果だと伺っています。
今年5月末には議会として天草市を訪問する予定ですので、意見交換ができればと思います。

❏ 「道の駅」まで5年の道のり?


浦河町の「道の駅」整備計画については、池田町長の公約だったこともあり、以前から議会で指摘されてきたそうです。
今回の神原議員と櫛桁議員の一般質問に対する答弁で、少しだけ前向きなトーンを感じました。
新年度は計画の叩き台をつくっていくそうです。
総合戦略」にも整備検討が明記されていましたね。

とはいえ、基本計画策定から運営開始まで5年程度を想定しているようですし、現時点では道の駅か物産館か(あるいは海の駅か)、新築か既存施設の改築か、構想はまったくの白紙です。
実現を待っている間にも、浦河のお土産を買いたい町内外の方々はいらっしゃり、町全体の機会損失(稼ぎ損なった利益)は日々増えていきます。

観光協会が機能強化と法人化を目指す中、そしてそれを町としても支援する中、非常にもったいないと感じています。
私自身もお土産を買っていけないこともありますし、お客さんも何も買えずにお帰りになったこともあります。
一方、浦河町が取り組んでいる「ご当地特産品開発支援事業」は2015年には5件ほど採択があり、お土産のラインナップはこれから期待できるところです。

この課題については5年も待っていられないので、発想を変えた取り組みが必要なのではないかと考えています。行政主導ではない形も考えられると思います。

❏ 公共施設の老朽化対策は


高度経済成長期に国中に一斉に整備された道路や上下水道、学校や公営住宅などのいわゆる社会インフラですが、その老朽化が大きな問題になっています。
また建設時は国の補助があった公共施設も、維持管理費は基本的にすべて自治体の負担になっており、人口も税収も減少する状況では今までのインフラをそのまま維持することが困難です。

国もこの問題を認識しており、全国の自治体に「公共施設等総合管理計画」の策定を指示しています。
これは今後30年ほどのスパンで、自分たちの地域の公共施設をどうしていくかを計画するものです。

浦河も例外ではなく、新年度までの2カ年で計画策定を進めているところです。
町全体で435棟もの公共施設、その半数が30年以上を経過しています。
まずは2015年度に委託して実施した調査の結果が出ており、近いうちに委員会でも報告されると聞いています。

荻野議員の一般質問では、公共施設全般、特に災害時の防災拠点にもなるファミリースポーツセンター(ファミスポ)を取り上げていました。
災害対策の視点で佐藤議員も触れていました。

築50年ほどの今のファミスポは限界にきており、今の破損箇所の修繕だけでも数千万円が見込まれます。今年の体育施設工事費全体で1,000万円の予算ですので、なかなか叶いません。
近い将来に建替・改修・新築のいずれかが必要ですが、いずれにしてもざっと15~30億円ほどかかる計算です。
国の補助金を活用しなければもちろん実現不可能なのですが、町の負担も当然必要になってきます。

ファミスポは今年で大きな方向性を決めていくとのことですが、浦河町の公共施設に関する基金の積立は5億円程度であり、他の施設も今後は優先順位をつけて考えなければなりません。まずは詳しい調査結果を待ちます。
なお、社会インフラの問題は下記のサイトがわかりやすいかと思います。

- 社会インフラの老朽化問題について知る!:nikkei4946


❏ 財政の仕組み


今回の議会で一番勉強になったのは、自治体の財政の仕組みについてでした。

議員になってから約一年、定例会が一回りして決算から予算まで一通り経験しましたが、行政は基本的に一年前に決めたことを補正しながら執行し、決算にいたります。
誤解を恐れずに言えば、この一年間の多くは私が議員になる前から決まっていたことについて議論してきたわけです。
これからの一年間は、この予算議会で決まったことを軸に議論し、来年以降に反映されていくことになります。
議会活動はこうした時間軸で物事を考える必要があるのだとあらためて感じています。

さて、この予算議会前に配布された予算資料、かなり読み込みました。
昨年の予算資料とも見比べながら、一般会計からの特別会計への繰り入れ、積立基金や公債の考え方を知ることができました。また、各事業ごとの財源もある程度までは把握することができました。
もちろんまだまだわからないことはたくさんありますが、財政を通じて浦河町行政の仕事の全体像が少しずつ見えてきました。

予算説明資料は付箋だらけになってしまいました

今までの一般質問は、基本的に財源を必要としない取り組みや考え方について質問させていただいたつもりです。
しかし、今後町の支出をともなう施策を提案していくことがあれば、やはり財源のこともあわせて考えなければなりません。
その下地を一年間で学ばせていただきました。

今後は町民のみなさんにも少しは説明できると思います。
このブログでももちろんですが、どこかで議会報告と意見交換を兼ねた場を設けていきたいと考えています。
なかなか思ったようには取り組めていませんが、今後も引き続き応援いただければ幸いです。


2016年3月19日土曜日

開かれた行政へ。ウェブ上の情報公開のガイドライン策定へ

開会中の第二回浦河町議会(定例会)、あと一日を残すのみとなりました。
一般質問を終えましたので、その内容のご報告です。

「浦河町公式ホームページでの情報公開について」質問させていただきました。
あらためて町部局の答弁内容を確認したところ、私の理解とちょっと食い違う場面があったようでした。
この点は個人的には反省が残る一般質問でしたが、内容としては大変前向きな答弁をいただけました。

❏ 情報公開のためのガイドライン策定へ


先日もお伝えしていた質問内容ですが、あらためて項目を列挙します。

  1. ウェブ上での情報公開の目的は何か。
  2. 統計や予算決算等は常に最新のものを公表しないのか。
  3. 町で作成した計画の内、公開されていないものがあるのはなぜか。
  4. 計画策定や事業推進のために実施した過去のアンケート結果を公表しないのはなぜか。
  5. 町が事務局である諸会議の議事録や配布資料が公開されていないのはなぜか。
  6. 議会と委員会の議事録も同様に公開するべきと考えているが、町長の見解はいかがか。

まずは①に関しては、「浦河町情報公開条例」を双方で確認をしました。

町が保有する情報は、私たちの共有の財産であり、これを広く公開することは、民主主義や住民自治の伸展など、開かれた町政を推進していくために不可欠であると考えます。 
(中略) 
情報公開制度は、すべての人が知りたいとき自由に知り得るよう知る権利を保障するとともに、町政の諸活動について説明する責任を全うすることにより、まちづくりへの町民参加を促進するなど、すべての人に開かれた公正でわかりやすいものでなければなりません。

町としても情報公開は必須のことと理解していただいています。
その上で、②から⑤にかけての公開を望む具体的な内容については、町全体でホームページに公開する情報の取り扱いを統一して、公開に向けて準備していくとの答えでした。
今までは単純に何を公開して何をしないのかが、各課の判断に委ねられていたようですね。

「どれくらい時間をかけるのか」との再質問に対しては「半年とか一年はかけずに」ということでしたので、結果を待ちたいと思います。
また、一度公開のためのガイドラインをつくってしまえば、今後は継続して公開されるはずです。
公開作業が進んだ段階で改めて確認させていただき、問題があればさらに議論できればと考えています。

⑥に関しては「議会の判断によるもの」とのことでした。

ところで先ほど確認したところ、新年度の町政執行方針と教育行政執行方針は公開され、教育委員会のページは新設されていました。
すぐに公開できると判断されたのだと思いますが、早速対応いただき大変心強いです。

早速いくつか公開されていました

こういう臨機応変さに小さな自治体ならではの強みを感じます。
市レベルの自治体だと、おそらくこんなに早い対応にはならないのではないかと思います。

❏ 自治体にとっての情報公開の価値


言及した本人の方が更新が遅れてしまいました。
今回の私の質問の意図は町民のみなさんにはちょっと理解されにくいものだと思いますので、取り急ぎ今回のために用意して読み上げた原稿を公開しておきます。
いくらかでも目指したい自治体のあり方をご理解いただければ嬉しいです。

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1947年、世界最初と言われるコンピュータのひとつがアメリカで生まれました。大きさは160平米、30トンありました。
今のインターネットが生まれる43年前も話です。

それから69年。
2016年の今日、コンピュータは人々のポケットにはいっています。スマートフォンの日本の普及台数は人口を超える1.5億台です。
そしてそのすべてが常にインターネットに接続しています。 

これだけコンピュータとインターネットが普及した現代、若者に限らずお年寄りも含んだ都市に住む多くの人々にとって、ウェブ上にないものはこの世に存在しないものと思われがちです。
みなさん、浦河町はどれだけ「存在」できているでしょうか?
残念ながら現状では、浦河はあまり「存在」できているとは言えません。 

お手元のコンピュータで何らかの言葉を検索すると、その言葉が掲載されているページの数、つまり情報の数が瞬時にわかります。
試しに近隣町村の名前を検索すると、「新冠」は35万件、「様似」は54万件、「襟裳」は65万件。「新ひだか」だと148万件です。
「浦河」は何件でしょうか?
41万件です。

いかがでしょうか。
坂下様似町長は「他所に行くと様似の名前も場所も知ってもらえていない」と悔しがっていらっしゃいました。
その様似よりも情報数が少ないのが、浦河です。 

まずは情報化社会における浦河のこうした現状をご理解いただいたうえで、私としては浦河町行政もより一層の情報公開をすすめるべきと考えております。
さらなる情報公開のメリットを三点ご説明して、具体的な質問にはいらせていただきます。 

① 理解と信頼の獲得

ひとつ目は、他所の人からの理解と信頼を得るためです。
浦河には毎年遊びに来たり、移住したり、転勤で越してきたりする方々も多くいらっしゃいます。これから来ることが決まっている方、来たいと思っている方もたくさんいらっしゃいます。
その方々が何か調べたいことがあったとき、わざわざ役場に直接いらっしゃったり、電話してくれるでしょうか? 

今は、電話する手間をかけてまで情報を得ようと思う人は多くありません。
他所の人に浦河のことを知ってもらいたければ、何よりもまずウェブに情報を公開する必要があります。
それに、これだけ情報が溢れ、簡単に手に入る時代にわざわざ、あえて情報を公開しないということは、場合によっては、公開できない理由があるのではないかと思われてしまいます。
正しい情報を公開していること自体が、安心できる信頼感につながります。 

② 行政課題解決の戦略

情報公開をするふたつ目の理由は、それが浦河が抱える多くの課題解決のための戦略のひとつでもあるからです。
池田町長の執行方針にあったように「浦河に問題が山積み」という現状があります。社会はより複雑化し、考えなければならないことも増えていきます。
ところがその問題を考える人の数、人口自体も減少しますし、町職員も減って、議員定数の増加もないでしょう。 

そんな中、住人だけで問題を解決するという従来の方法だけでなく、町外の浦河に想いのあるみなさんのご協力を得ながら浦河町を舵取りしていく必要があります。
そして、情報化社会ではそれが可能になってきました。
私事ではございますが、私のブログの記事をご覧になった町内外の様々な方々から町政に関するご助言を実際にいくつかいただいているところです。 

外部の専門的知識や新技術といった形のない協力も施策に活かしていけるはずです。
その時に、ただ漠然と「協力して欲しい」といわれても困ってしまいます。
浦河が何に困っているかわからないからです。
「浦河に戻りたいけど仕事がない」という方も、案外浦河でできることがあるかもしれません。
まずは悩み事を一緒に考えてくれる方々のために情報を広く提供し、そこから課題解決の道筋のヒントを得るべきです。 

先日の池田町長の執行方針では、浦河応援団を獲得すると仰っていました。
浦河産品だけでなく「まちの情報」も届かせ、新たな無形の協力も仰ぎましょう。
岡内教育長も教育行政方針で「町外の資源も多く活用する」と言明されていました。
しかし、浦河に協力したくても、情報がなければ何をどう協力していいのかわからないでしょう。
そしてそれは町民にとっても同じなのです。 

③ 町民協働のまちづくり

みっつ目の理由は、町民の協働によるまちづくりのためです。
今年改正する予定の総合計画ですが、今の総合計画には「町民参加と協働によるまちづくりを推進するためには、行政情報の共有が必要」とあります。
さらにここには「今後も迅速に各種情報を収集提供し、町民と共有できるよう充実に努めます」と明記してあります。
「協働するためには行政情報の共有が必要」、これは私がわざわざ申し上げるまでもなく、すでに周知のことであります。 

ぜひこれを今以上に進めましょう。
若い人たちが情報を得る手段は手紙や電話ではなく、インターネットです。 

何も今すぐ情報をわかりやすいように加工して発信しようと言うのではありません。
まずは今もっている情報を提供するところからはじめればよいのです。
予算もかからず、職員のほんのわずかな時間をかければできることですから、積極的に行わない理由は特にないように思います。 

以上の観点から、ウェブ上での情報公開を進めるべきと考えますが、町の考えについて伺います。(了)
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ちなみに冒頭の世界最初のコンピュータですが、エニアック(ENIAC)のことです。
厳密には二番目なのかもしれませんが、サイズにインパクトがあったので採用させていただきました。

ENIAC

あらためて情報技術の進展のスピードに驚かされますね。
新年度の予算には公式ホームページのスマートフォンの最適化も含まれていましたが、情報自体の充実とあわせて期待しています。


2016年3月11日金曜日

3月議会の一般質問は「浦河町公式ホームページでの情報公開について」

来週から再開する議会に向けて一般質問の準備をしてきました。
アイディアはいくつかあったのですが、もう少し調べないと深い議論にならなそうだったり、タイミングの問題もあったので今回もひとつに絞り、先ほど発言通告書を提出してきました。

❏ 発言要旨


提出した発言要旨は下記の通りです。

浦河町公式ホームページでの情報公開について


インターネットで検索すればわかることが常識になっている情報化社会においては、情報公開していること自体が信頼につながる。
浦河町としても町外の方からの理解と信頼を得るために一層の情報公開を進めるべきである。
また、町が抱える課題解決の戦略として、外部の専門的知識や新技術といった外部資源を活用したり、様々な協力を得るためには情報開示は前提条件である。
さらに、外部のみならず町民の協働によるまちづくりのためにも行政情報の共有は必要である。
以上の観点から、浦河町のウェブ上での情報公開については不十分だと認識している。

(1)ウェブ上での情報公開の目的は何か。
(2)統計や予算決算等は常に最新のものを公表しないのか。
(3)町で作成した計画の内、公開されていないものがあるのはなぜか。
(4)計画策定や事業推進のために実施した過去のアンケート結果を公表しないのはなぜか。
(5)町が事務局である諸会議の議事録や配布資料が公開されていないのはなぜか。
(6)議会と委員会の議事録も同様に公開するべきと考えているが、町長の見解はいかがか。

❏ 行政情報は基本的に住民のもの


と、質問内容を公開しながら急いで説明を付け加えるのですが、これをご覧になった方は浦河の情報公開は遅れているとお感じになるかもしれません。
確かにそれなりに大きな市レベルと比べると公開されている情報は敵いません。

今年の執行方針は未公開。教育方針は4年前...。

しかし、あらためて町村レベルのいわゆる先進地や近隣の自治体の公式ホームページを見比べたりもしてみたのですが、浦河町の情報公開が特筆するほど遅れているというわけではありません。
職員の数が圧倒的に違いますので、そこまで手がまわらないのが現状だと思います。

それでもなお、職員それぞれが日常業務の中で情報開示を意識しながら仕事をしていただきたいですし、私としては町としての考え方を質し、より一層の行政の見える化を望みます。
行政が保有している情報は、基本的に住人のためにあることを確認します。
これは今年の抱負でも述べたところです。

なお(6)の議会の議事録公開の件は、議会事務局から「議会のことは議会で決めるので町長の見解を問うのは相応しくないのでは」と指摘されました。
確かに議会をどう運営するかは7名の議員で構成される「議会運営委員会」で議論されるため、町長がその意思決定のプロセスに加わることはありません。
しかし、先日の勢旗先生による議会改革の講演では、「議会のあり方については、首長の見解を問うこともできる」との考え方が示された点を確認し、残すことになりました。

質問の順番はまだ決まっていませんが、来週前半です。
来年度予算の質疑の準備も進めます。


2016年3月9日水曜日

MiOに「まちなか元気ステーション」整備?介護予防、認知症対策、子育て支援を一体化。

本日3月9日(水)厚生文教常任委員会にて「まちなか元気ステーション整備計画」の説明がありました。

❏ 3つの課題の総合解決案としての提案


様々な計画に位置づけられる長い説明だったのですが、要点としてこの事業は主に介護予防、認知症対策、子育て支援の浦河の3つの課題解決を図るための拠点づくりと理解しました。

1.介護予防

現時点で浦河には、700人以上の要介護認定者がいらっしゃり、さらに増加傾向にありますが、高齢者の方々が元気に暮らしていただくために軽運動をしていただいたり、健康の意識づけを行っていく必要があります。
この考え方を介護予防といいますが、あちこちに施設や窓口を用意するのではなく、ワンストップでサービスと情報を提供できる場が必要でした。

2.認知症対策

本人のみならず家族の負担も大きい認知症ですが、今までも認知症サポーターや見守りネットワーク構築を行ってきました。
今後は関係者が悩みを共有したり、情報交換できる場としての「認知症カフェ」づくりや支援体制の強化といった認知症対策が望まれます。

3.子育て支援

地域一体となって子育てしやすい環境づくりに取り組んでいく考えから、町は異世代交流の場づくりを推進しています。
子育て世代から要望も多かった子どもの遊び場の充実ですが、屋内で安心して遊ばせられるキッズスペース拡充の声もありました。


こうした複数の課題の総合的解決の提案として、ショッピングセンターMiOのスペースを借りて「まちなか元気ステーション」を整備する計画です。
現在は役場の一階にある「地域包括支援センター」も移転して、一元化したサービス提供を可能にする考えです。
改修計画図(案)がこちらです。

浦河ショッピングセンターMIO改修計画(クリックで拡大)

❏ 懸念点は「本当に利用してもらえるか?」


私からはまず「子育て支援」の部分について、子育て環境の整備はぜひ進めるべきとの考えから高く評価しました。

また「介護予防」や「認知症対策」については、将来的な財政負担を考えると理解できます。
現時点でも国民健康保険や介護保険にかかる現役世代の負担は昔に比べたら天地の差ですよね。行政負担に占める割合も増加しています。

でも、コスト削減はあくまで執行側の事情です。
つまり、その介護予防や認知症対策といった機能は、必ずしも今、すべての町民が必要としているものではありません。

行政が必要とする施設や機能を、本当に住民に利用してもらえるのか?

事業を進めるにあたってもっとも重要なこの視点が欠落しがちです。
まずはきてもらうための仕組みをつくらなければ、どんな機能も提供できません。

異世代交流にしてもどのくらいの町民が望んでいるのか不明ですし、「誰でも来れる場には誰も来ない」という行政によくありがちな間違いを犯すのではないか。その懸念を町民としての目線から指摘しました。
小さなお子さんも高校生も保護者も高齢者も誰もが快適に過ごせる空間というのがうまくイメージできません。

これについて、「運動したい」「健康に関心がある」という高齢者はそれなりにいらっしゃり、現にイベント等では健康測定器具は人気があるそうです。これは知りませんでした。
また今まで視察した各地の施設のよいところをしっかり取り入れて、担当の方針としては「ここにしかない価値をつくる」という考えで、いくつかのアイディアも示されました。

また、今後も具体的な指摘、提案や意見はひとつずつ斟酌して検討し、改良改善しながら進めるとのことです。
みなさんはどのような施設であれば利用したいと思えるでしょうか。

❏ 具体的なハード面での問題点


意見があれば検討したいとのことでしたので、早速私からもハード面での指摘をいくつかしました。

  1. 受付からの「視認性の確保」とあるが、むしろ軽運動や測定をしている様子が全職員や買い物客からみえてしまう状況で使いたいと思う利用者が果たしているのか。
  2. 高齢者が必要としているのは、運動スペースよりもより多くの机と椅子のセットではないのか。買い物の合間の休憩や子どもを遊ばせるお母さんたちの憩いの場という観点からも喜ばれるのではないか。
  3. 上記に関連したスペースの使い方として、「リアル野球盤」という一部の方のための専用スペースを設けるのか。
  4. 保護者からは子どもたちが勝手にキッズスペースから走って外に出てしまわないように柵のようなものがあればありがたいという意見がある。設置することはできないのか。
私からはあくまで意見として述べただけでしたが、他の委員からも様々な指摘がありました。

大筋の説明としては、計画はあくまで計画であり、当然今後の修正は可能とのことです。また、整備計画自体が議決されれば、専門家の助言もいただきながら、内容は議論していくとのこでした。

視認性の確保については、職員の働きづらさにもつながるのではないかと指摘がありました。
騒がしかったり、緊張感を緩めることが許されない環境ですからね。

町長からは「集中力がそれても仕事をするのが行政職員だが、塩梅も大事」との認識も示されましたが、担当職員は「もともとオープンな場での職場も経験しており、大きな問題はない」との回答でした。

利用者がみられてしまう環境については「例えば透明な壁をつくるなど措置がとれるかもしれない」との回答でしたが、他の委員からも指摘があったのでこの点はさらに一考の余地があるはずです。

「リアル野球盤」に関しては、これは例えばリアル野球盤「も」できるスペースだという説明でした。ただのスペースであれば、平常時は机や椅子も配置できそうですね。
キッズスペースの柵設置に関しても、前向きな回答でした。

❏ 目的と立地をめぐって議論は持ち越し


ところがそもそもの計画自体の賛否をめぐる問答もありました。

神原委員からは施設のテナント料金について質問がありましたが「相手のあるこれからの交渉であることから回答は差し控えたい」との回答で、予算の面からも場所がMiOでいいのかという視点がありました。

また、もし議決された場合のスケジュールについて小原委員より質問があり、「財源である厚労省の交付金募集のタイミングにもよるが、例年通りであれば2017(平成29)年2月より事前協議を重ね、早ければ交付と着工は同年の予定」とのことでした。

こうした点から本案件は次回へ持ち越しとなり、元気ステーション整備の目的と立地についてあらためて議論の場が設けられます。

議論が一区切りの時に、町長が本事業への想いを語る場面がありました。

町長に立候補した際に、健康日本一の町をつくりたいと公約にいれました。今回ようやくその一助になる施設が実現できると、個人的には大変感慨深いところもあります。
財政事情の厳しい中で、あるものをいかに活用していくかという視点でまちづくりをすすめていきたいと考えていますので、ご理解を賜りたい。

「あるものを活用する」という考え方は将来世代への負担も減り、大変素晴らしいと思います。

一方、どんなに執行側の事情や想いがあったとしても、町民が利用したいと思う事業ができなければ絵に描いた餅です。
本件に限らない話ですが、前半に指摘したような視点をしっかりと踏まえて事業計画をたてていただきたいと願っています。


2016年3月8日火曜日

いよいよ予算議会はじまる。今年の執行方針と主な事業は?

本日3月8日(火)、いよいよ本会議が開会しました。

主な議案は、予算です。
毎年3月に行われるこの通称(?)「予算議会」で、その年の行政の仕事が決まってきます。会期も長く、一年を通じて特に重要な議会になります。

休憩中に撮影した議席の様子

浦河町の場合、まずは一日だけ開会して一週間休会します。
今日はその一日目だったのですが、町長から「町政執行方針」、教育長から「教育行政執行方針」が述べられた後、副町長から主な事業内容についての「予算説明」がありました。

これだけで一旦休会し、議員は来週の再開までの期間で一般質問や予算質疑の準備をします。
「予算委員会」が別に設けられて議論される自治体もあるそうですが、浦河は本会議でぶっつけ本番です。

❏ 町政執行方針


さて、このような状況ですので報告も難しいのですが、ひとまず執行方針と簡単な予算内容についてお伝えしておきます。

池田町長による執行方針では、まずこの一年は浦河町制100周年が盛り上がったことを踏まえて、新たなスタートである点を確認。
施設の老朽化や医療技術者の不足、厳しい財政状況と問題は山積みですが、ふるさと納税や夏いちごの成功のように大きな可能性も見いだせると強調しました。
町民の先頭に立って全力を尽くすと力強く宣言されました。

その後は主な継続、新規事業を踏まえた説明がされ、岡内教育長の教育行政執行方針です。
自立の気概と生きる力を育む学校教育と町内外の資源を活かした生涯教育と大きく二本柱と受け止めました。
人口の一割にあたる小中高生1,300人を町の財産とし、子育ては大人の役目と確認。
家庭と学校の双方が尊重しあって教育を進められるよう支援していくと宣言されました。

❏ 予算案


浦河町の2016(平成28)年度の予算案が提出され、山根副町長から主な事業の説明がありました。
まず予算案ですが、一般会計は10%増の95億円でした。特別会計含む総計も137億円
私が調べた限り、どちらもこの10年間で最大規模です。

会計2016年度予算2015年度当初予算前年比
一般会計9,497,0008,632,000110.0%
国民健康保険事業1,932,2421,960,17698.6%
後期高齢者医療151,111151,27999.9%
介護保険1,165,3291,098,653106.1%
臨海部土地造成事業282282100.0%
下水道事業642,062645,35099.5%
簡易水道事業17,79116,513107.7%
水道事業343,136340,180100.9%
合計13,748,95312,844,433107.0%

主な要因は「ふるさと納税」の寄付急増による歳入増です。今年は4億円ほどが見込まれています。
町税の回復傾向も手伝って、これにより自主財源が34.4%に増えました。

一方、国・道支出金も16億円とここ10年では2010年を除く最大規模。
ちなみに2010年は、大規模な国庫支出金事業、地上デジタル放送設備整備が実施された年で20億円でした。

全額が国庫支出金を財源とする低所得高齢者向けの臨時給付金(ひとり3万円!)の給付事業(5千万円)などの影響かと思われます。
参考までに、一般会計の歳入(財源別)はこのようになります。



次は歳出です。

ハード面では、今年も引き続き好調ないちご生産の後押しとして就農者用と栽培試験用のハウス造成(1.7億円)、堺町川沿団地と荻伏B団地の建替事業(3.3億円)などが予算計上されました。
ソフト面では、以前に記事にした子育て支援として各種助成金の整備、学力向上として全小中学校の無線LAN化とタブレット配布(4千万円)などが主な新規事業です。

私が注目して評価したい事業は、町ウェブサイトのスマートフォン最適化対応(50万円)、国内外から評価が高い乗馬療育推進(1,600万円)、本格的な観光の推進を図る観光協会法人化補助(1,500万円)などです。
浦河にとって明るい展望がもてそうな、前向きな動きを応援していきたいです。

予算案をどうみればよいのか、それだけで一苦労です。
過去10年分の町報から予算決算の数字を抜き出して推移をみたり、先輩議員や職員から見方を教えていただいたりしながら少しずつ把握に努めています。

先日は町債の考え方を知って「なるほど!」と思ったのですが、それはまたの機会に。
トライしようとして本当に思いますが、わかりやすく予算を伝えるのはなかなか難しいですね...。

2016年3月1日火曜日

議員の定数と報酬の妥当性、浦河はどう考える?

先週になりますが、2月27日(金)に議員研修会がありました。
前に報告した議員定数削減調査特別委員会で、「まずは浦河町議会として議会や議員の役割について学び、基本認識を共有しよう」ということで企画されたものです。

講師に北海道町村議会議長会参与(元事務局長)の勢籏了三先生をお招きし、「議員定数・議員報酬と議会改革の行方」という題でお話いただきました。
以下、私が大事だと思う点を中心に抜粋して補足しながらお伝えします。

全道の町村議会に詳しい勢籏先生

❏ そもそも議員とは、議会とは?


そもそもなのですが、地方議員とは何でしょう。
実は議員についての説明は、地方自治の基本法である「地方自治法」には書かれていないそうで。ちょっとびっくりですよね。

他の法律でも議会の議員は「選挙で選ばれる特別職地方公務員」ということくらいしか書かれていないんです。
つまり法律上、議員は議会に出る職業のことです。

では議会では何をするのかというと、こちらのほうは色々と書かれているのですが、主に「議決」をします。
議会で議決をする人たちが議員です。

では議決とは何でしょうか。
これを説明するためには首長の話をしなければなりません。

選挙で選んだ首長が持つ「執行権」は非常に強いもので、ある程度のことはどんどん決めて実施できてしまいます。

国会は議員の中から代表(首相)を選ぶ「議院内閣制」なので、どちらかと言えば議会みんなで議論しながら決めていくという性格が強いです。
しかし、地方自治体は議員も首長も住民が選ぶ「二元代表制」といって、強いリーダーシップを持つトップが行政を牽引するイメージです。大統領制もこちらです。
でもそれが行き過ぎると困りますね。

そこで、首長の考える計画で良いのかを議論して最終的に決める権利を住民はもっています。その権利がつまり「議決権」であり、住民の代表である議会(議員)に委ねられています。
これが行政のチェック機能と呼ばれる地方議会の役割ですね。
(かなりざっくりとした説明ですので、ご了承下さい。)

❏ 高まる議会改革の気運


ところが昨今、地方議会について様々な問題点が指摘されてきています。

  • 「口利きや選挙違反など不祥事が多い」
  • 「男女比や年齢など議会構成がいびつ」
  • 「監視の役割が機能してない」
  • 「閉鎖的で活動が不透明」

こうした点から議会とは何かがあらためて問われはじめ、住民自治の気運の高まりの中、いわゆる「議会改革」が叫ばれるようになりました。
栗山町を嚆矢とするその議会改革の中身とは、次のような内容でした。

<栗山町の議会改革の四本柱>

  1. 議会報告会の実施
  2. 議員同士の議論
  3. 町民の声の反映
  4. 首長の反問権

多様な意見がある町民の声を丁寧に聞き取りきちんと行政に届ける一方、首長に反問権も与えたことで自分たちも責任ある発言を心がけ、より中身のある議論を可能にしたということかと思います。

2に議員同士の議論とあります。
議員同士は議論をしないのかと疑問に思われるかもしれませんが、議会(委員会)は基本的には行政の提案に対してそれぞれの議員が質問したり、意見する場なのです。
これでは一方的な発言にとどまり、議論が深まる仕組みになっていないのです。
おときた駿都議会議員のこちらの記事がわかりやすいです。

- 議会が「議員同士で議論をする場に変わるべき」なのは、ずばり人口減少社会だからである?!


4の反問権というのは、議員の意見や提案に対して首長が逆に質問を切り返せる権限のことで、一般的な議会では許されていません。
それくらい首長の執行権は強いと考えられていますので、これを認めるということは自分たちも意見するからには相応の勉強をして望む覚悟があるという意思表明でもあるでしょう。

この全国的にも話題になった栗山町議会基本条例制定に至るまでの議会改革。
真似をする議会もかなり増えましたが、栗山以外では実際にはあまりうまくいっていないのが現実のようです。
議会としてきちんとそのあり方を議論せず、条例という形だけを採用しているのがその理由とのことです。

❏ 勢籏先生の考えと提案


以上ほんの一部しか紹介できませんでしたが、議会改革を考える上で必要な議会の法的根拠と今までの議論の経緯を詳しくお話いただきました。
その上で勢籏先生の考え方も随所に示されていました。

私なりに簡単にまとめると、「栗山町のような住民から信頼される議会を目指すべき。実現するためには、議員の時間も手間もかかるため定数も報酬も下げるべきではない」という考えでした。

また、時々みかける議会の役割として「政策立案」がありますが、あくまで本来の役割である「行政監視」が一番大事であると強調され、議会を変える具体的な手法としては「通年議会」をおすすめされていました。

これにより、通常は首長にある議会の招集権を議員にも与えて、事後報告である専決処分を減らすべきとのことでした。
専決処分が「急だったので議会にかける時間がなかった」と方便に使われることが多いようです。

❏ 通年議会のデメリット、会派制の意義


講話の後に質疑の時間もいただいたのですが、佐藤議員からこの通年議会のデメリットについて質問がありました。

答えとしては「あまりないと思うが、本会議を重要視しすぎると結果として常任委員会の役割が低下するかもしれない。また議員の私生活がかなり制約される可能性がある」とのことでした。
浦河町では、それなりに頻繁に委員会で個別事業について説明はされており、首長による強引な専決処分がそれほどあるとは思えず、通年議会の提案は私にはあまりピンときませんでした。

私からは会派制の意義についてお聞きしました。
「議会での個々議員の意思表明について町民から聞かれたときに「会派で決めたから」と逃げ道に利用される場合もあるのでは」との質問でしたが、「北海道内では浦河町以外に10町村ほどが会派制を採用しているが、必要性がある場合もあると思う。逆に議会の発信力が不足しているのではないか」とご指摘いただきました。
10町村くらいしか会派制がないならば、ますます必要性がよくわかりませんが...。

具体的には議会だよりの配布を議員が手分けして直接配る方法が提案されました。7,000世帯を18人で回るのが現実的かどうかわかりませんが、よい手立てかもしれませんね。

❏ 浦河町の議会はどうあるべきか


さて、この講演は講演として、浦河はどうしていけばよいでしょうか。
議員定数については前回も述べましたが、昨年の無投票の結果を受けてまずは議会として責任を負う意味で削減が必要だと思います。

その上で、議会や議員の役割を浦河町でしっかり位置づける必要があります。
報酬をあげて立候補者が現れた自治体はまだありません。
これはやはり議員の仕事が明文化されていないことにも要因があるのではないでしょうか。

「仕事がどうかわからないあれもこれもやらされそう。あれこれ言われて面倒くさそう。しかも言いたい意見も言えなさそう」と思ったら、普通の若い人はやらないのではないでしょうか。
そして実際にそう思われています。
成功したと言われる栗山町議会でさえ、若い人や女性がでてきているわけでは全然ありません。

市町村ごとに議会のあり方は違いますから、浦河モデルをこれから独自につくることもできるはずです。

よく「議員になったってことは骨を埋めるんだね」と死ぬまでの名誉職を前提にしたような言い方をされることもあるのですが、そういう考え方をすっかりやめてしまうこともできます。
そんな常識はただの思い込みで、法律のどこにも書いていないのです。

例えば、4年ごとに様々な町民がどんどん入れ替わっていく議会はどうでしょう。

そうすれば、行政がどう物事を考えて仕事を進めているかわかるひとが町民の中にたくさんいるまちになります。
いわゆる行政用語の「翻訳者」が増えたり、町政に関心をもったり理解する町民も増えるはずです。経験者が増えればどれくらいの報酬が妥当なのかも自分たちでわかってくるのではないでしょうか。

それぞれが普通の一町民感覚で議会でものを言い、わかりづらい説明があるときはわかりやすい説明をするよう行政に求めればよいのです。
納税者たる町民にわかりやすいように説明するのは、本来は彼らの仕事です。

そんな風に行政の仕事をもっと身近に感じてもらえれば、一生懸命やっている役場職員も働きやすくなるのにと思います。
これは一例ですが、みなさんはどういう議会がいいと思いますか?