2016年2月24日水曜日

透析患者の移送サービス等4件の調査、国民健康保険料はどうなる?

2月15日(月)に開かれた厚生文教常任委員会についてご報告です。

❏ 国民健康保険料の負担増へ


一件目は、国の税制改正にともなって必要になる浦河町の条例改正でした。

今年も、世帯あたりに課税される国保の限度額が上がります。
基礎課税額で2万円増後期高齢者支援金額で2万円増合計4万円増になります。

今回は課税限度額の改正ですので、浦河町内で実際に負担が増えるのは、10世帯程度の高額所得者になります。
また低所得者に対する軽減措置があるので、むしろ楽になる家庭も少し増えます。

とはいえいつの間にか少しずつ負担が増えたり、新たな制度が増えている国保。
よくわからないので、ここ20年分の推移をちょっと調べてみました。



1995年は52万円だったのに対して今年は89万円。
20年で倍に近いんですね。
「家計への押し付けではないか」と言いたくもなりますが、国全体の社会保障費はどうなっているのでしょうか。
同じ期間の推移を出してみました。


1995年は64兆円だったのに対して今年度は119兆円。2016年度は120兆円を超えるでしょう。
やはり20年で倍増です。

保険料の増額もやむなしでしょうか。
なお、10年後の2025年には145兆円になるとの推計もあり、このままだとその頃には国保の課税限度額は100万円を超えてきそうですね。

ついでに払うのがかなりつらい実感のある国民年金もみてみました。



いつの間にこんなに増えているのでしょうか。
今年は年間にすると20万円の負担です。
10年も経てば、月額2万円と言われても不思議ではありませんね。

それに引き換え、私の生まれた頃(1984年)は月額6,220円だったというから驚きです。
そのさらに10年前(1974年)は月額900円だったそうです。ちょっと信じられません。

- 国民年金保険料の変遷|日本年金機構


今後も引き続き税金だけでなく、保険料も増えてくでしょう。
国家財政もそうかもしれませんが、家計もパンク寸前という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

こうしたことから従来の医療・介護・子育て・年金といった社会保障全体のあり方を国レベルで根本的に改めていく必要がある一方、もはや待っていられない現状もあります。
国や既存の制度に頼らずにやっていける環境や価値観を、自分たちそれぞれでつくりあげていかなければならないのではないかと思います。

❏ 荻伏診療所の指定管理者更新


話が少しそれてしまいました。
二件目は、この3月で期間が満了する荻伏診療所の指定管理者の更新でした。

現在の指定管理者(荻伏クリニック)は、特に問題もなく地域で高い評価を得ながら地域医療を担っていただいていることから、評価委員会の評価の上、非公募で継続更新とする方針です。

❏ 高齢者等の移送サービスの改正


三件目は、高齢者等の移送サービスの見直しでした。

ひとつは、現在一名の利用がある要介護者の一般通院に関して、介護保険制度の枠内で実施する方針です。

またさらに、人工透析の通院にかかる移送制度が変更されます。
現在は65歳以上、病院から4km以上離れた方を対象としていたのですが、この条件を廃止します。
また、新たに土曜の午後も移送サービスを実施することになります。

これにより今年は16名(実数)の利用を見込み、車両も2台体制になるとのことです。
予算としては、現在250万円が社会福祉協議会への委託料として計上されていますが、これが730万円ほどになり、利用料の徴収でも補っていただくとの説明でした。
利用料は課税世帯で300円/日、非課税世帯で150円/日、生活保護世帯は無料となります。

❏ 浦河町内の保育所環境


四件目として、荻野委員からフレンド幼稚園のチラシを題材に、町内の保育環境についての議案の提出がありました。

町部局の説明によると、フレンド幼稚園は昨年12月より北海道庁へ認定こども園の認可申請中であり、この4月から保育開始の予定。
幼稚園児の定員25名から保育として10名増、計35名体制になる見通し。
0歳から2歳までのいわゆる3号保育※ではなく、未就園児(2歳)の一時預かりと3~5歳対象の保育となります。

浦河町全体で子どもの数が減っている中、事業者によるある種の奪い合いのようなことも発生しているのではないかと懸念も指摘されました。
しかし、幼稚園や保育所をどうしていくかの5年、10年スパンでの計画は現在はなく、今後検討していくとのことでした。

※ 「3号保育」とは?

子ども・子育て支援新制度」が2015年4月からスタートしています。
幼児のお子さんがどのような施設を利用できるのかが3つの認定区分にわけられるようになりました。
詳しくは上記の内閣府の説明ページよりも下記のサイトがわかりやすそうです。

「支給認定」ってなに? |ママの知りたいが集まるアンテナ[ママテナ]



厚生文教の分野は自分自身が一町民としてかかわる場面も、仕事でもかかわったことがほとんどないので正直わからないことばかりですが、こうして議案になるたびに少しずつ勉強です。


2016年2月20日土曜日

JR北海道は全路線が赤字、日高線復旧をどう考えるか?(2)

先日2月16日に夕張市で開催された「最果ての鉄路に未来はあるか -日高線の事例に学ぶ"夕張線"の存続問題-」勉強会に伺ってきました。

通称夕張線は、昨年10月に清水沢駅が無人化、今春から本数が約半分に減便と存続が危機的な状況を迎えています。
今回は、日高線について言及した投稿をご覧になった清水沢プロジェクト代表の佐藤真奈美さんから「話題提供として日高線の状況を話してほしい」と依頼されたのでした。

少人数で中身の濃い話し合いになりました

❏ 日高線の問題を分解して、整理する


私からは、日高線の情報や現在までの経緯を簡単にご説明し、JR北海道は新幹線や札幌近郊を含む全路線が赤字である事実を指摘し、「赤字だから廃止」とはならない点を強調しました。
鉄道には公共性があり、公的負担も必要です。
ここまでは前回の投稿までで調べたことです。

今回はさらに考えを進め、鉄道が公共財として機能する役割を「地域公共交通」と「観光・広域利用」のふたつにわけて、「JR日高線問題」を浦河の視点であらためて整理しました。
そして、特に後者の観光・広域利用の視点から必要性を考えてみました。

❏ 空港からの移動手段としての日高線


現在、北海道外から浦河へのアクセスは、新千歳空港を利用していらっしゃるのが一番便利です。

ところが、直接空港から浦河へ走るバスは一日1本だけであり、現実的な移動手段ではありません。
自分で運転しない限り、反対方向である札幌へ一度出てからバスで来ることになります。
乗り継ぎを考えると5時間くらいはみたほうがよいでしょう。

しかし、JRであれば2回の乗り継ぎが発生するものの一日5本程度が確保され、時間も4時間ほどみていただければ充分かと思います。
商用、観光どちらの側面からも必須な交通手段ではないでしょうか。

❏ これからの北海道に必要不可欠では


外国人観光客が急増する北海道ですが、道南や道央に集中する観光客の広域分散化を進め、その観光振興の目的のひとつとして地域交通の確保と言明しているのです。
バスの運転手不足もこれだけ深刻化している中で、北海道全域に渡る網羅的な鉄路を確保するどころか縮小とは理解に苦しみます。
言葉だけのポーズでしょうか。

また、浦河町は来年度の観光振興のための新組織発足を予定しており、積極的に観光行政を進める考えです。日高管内でもHIDAKAおもてなし部会の積極的な取り組みをはじめ、民間での動きも活発になってきています。
こうした現状にも関わらず復旧に対して二の足を踏んでいるJR北海道に対して、国や道も公的負担はもちろん積極的な指導をしていくべきでしょう。

❏ 「理由なく反対でもいいんだ」


ところが実を言うと、当日の私の語り口はそれほど強気なものではありませんでした。
どちらかと言えば、「廃止やむなし」「興味がない」との声が多く、関心をもっていただくこと自体が難しい問題です。
しかし、夕張でみなさんとお話させていただく中で勇気づけられたのでした。

「日高線は何回か乗ったけど素晴らしい景色。全駅で降りてみたいよね」
「29駅というのはすごい。これらの駅だけでも財産」

そんな感想をいただける路線をもっていることを、もっと誇りに思ってもよいのではないでしょうか。
他にも様々語られたのですが、結局のところ私としてはどのように説得力をもって必要性を訴えていけばよいのかという視点からみなさんの意見を捉えていました。
しかし、今回はまったく違う大切な視点をいただいたように思います。

「相手と同じ土俵で議論なんかしなくてもいいんだ。理由なく、乗らなくても反対でもいい」

そう言い切ってしまえることに凄みを感じました。
国が必要だからとひいたもの、それが夕張ではひとつの文化になっていました。

「赤字、黒字というたかが一民間企業の経営状況だけで議論できるものではないんだよね」
そう一蹴できる強さに素直に感動しました。

言葉にするとそれだけで、正直言ってうまく伝わるか自信がないのですが、これからの世代が過去から受け継ぐべきものとは何なのかあらためて考えさせられました。
そこには言葉にはなりづらい、しかし大切な何かがありました。

❏ 言葉になりづらい、大切な何か


そこで思い出したのが、少し前にネット上で話題になった白滝駅のことでした。
女子高生がひとり利用しているので存続させた美談として紹介されていました。
そこに知人のさのかずやさんが言及していました。

「ひとりの女子高生のために駅が存続する」という話は「美談」なんかじゃない


美談として紹介されたこの一件に対する違和感が語られているのですが、鉄道に限らず、田舎の何かを説明しようとするときに感じるもどかしさ、言語化しづらいものがあります。
ちなみに日高線ではひとりどころか数百人単位で困っています。

都市のひとにとっては田舎は代替可能なものです。
どこかの田舎がダメになったら別の田舎があります。
その田舎の食や自然、景色だって他の田舎で満足されてしまいます。
話題として消費したらそれでおしまいです。
残酷な現実ですが、衰退してもどうでもいいものなのです。

ではどうでもよくないと言えるのは誰かといえば、住人や出身者くらいで、少数者です。
その大切さを訴えるときに、なぜ大切なのかを相手の文脈で語ることは難しい。
何か相手に対してそこにしかない価値をつくりだしたり、提供したりできればよいのですが、そうではないときにどう訴えればいいのか。

ちょっと話はそれてしまったかもしれませんが、そんなとき「理由なく反対でいいんだ」と言える勇気は大事になってくるのではないかと思いました。
これは精神論やノスタルジーという言葉で片付けられない、人間の尊厳にかかわる問題ではないでしょうか。

知った顔で「しょうがない」と諦めるのは簡単ですが、田舎であればあるほど理由なく闘う強さが求められるのではないか。
そしてそれは田舎に限らず今の言葉の使われ方の中でもっとも不足しているものではないか。そんなことを思いました。

❏ 当日の詳細はこちら


もう少し当日の内容について書くつもりだったのですが、ちょっと違う内容になってしまいました。
最後になりますが、当日会場で語られた内容は清水沢プロジェクトのウェブサイトで詳しく報告されていますので、よろしければご覧ください。


また、私の発表内容はこちらのスライドをご覧ください。




2016年2月15日月曜日

総合戦略で子育て助成が充実する一方、すべての小中学生にタブレット導入?

2月15日(月)、厚生文教委員会が開かれましたのでご報告です。
今回は地方創生総合戦略で提示されていた事業の内、2016年度に予算化予定の所管事業(新規と拡充)の審議でした。

ふるさと納税で子育ての充実へ


自治体が総合戦略を策定すると活用できる国からの交付金があるのですが、今回はすべてその対象外の事業で、おおむねふるさと納税を財源とする子育てや教育に関わる部分の説明でした。

浦河町のふるさと納税の使い途は現在、大きく「子育て」「乗馬療育」「その他」から選べるようになっており、子育てをご指定いただく方が多くいらっしゃいます。
お陰様で今回は、これまで議会の一般質問等で提案されていたものの「財源不足」と説明を受け、実現されてこなかった事業が数多く盛り込まれていました。
これも今年度激増したふるさと納税を通じた浦河町外の方々からのご寄付によるものであり、私からもこの場を借りて御礼申し上げます。

子育て世帯の負担軽減へ様々な取り組み


審議した具体的な事業は下記のとおりです。

施策内容区分予算額(千円)概要
多子世帯の学校給食費の軽減新規9,13918歳以下の子ども2以上世帯対象
高校入学に係る教科書費助成新規1,5601.5万円を上限に全員
すくすくこども券の拡充拡充21,376高校生まで対象、1枚当たり500円に
インフルエンザワクチン接種助成新規2,284高校3年までワクチン代助成
ロタワクチン予防接種助成新規2,662生後6ヶ月までワクチン代助成
ピロリ菌検査助成新規2,383中高生は検査費用助成
放課後児童ひろばの拡充拡充6,362指導員1名増(荻小、東部小)
児童館指導員の拡充拡充11,257指導員1名増(堺町、ふれあい会館)
学習サポート事業拡充2,576大学生招聘事業、ドリル配布
ICTを活用した学習システム新規39,528小中学生全員にタブレット導入
学校づくりを考える会事業新規252中学校区毎の地域教育のあり方検討
子育て支援ファイル事業拡充858パンフレット等作成配布
少年団・部活動等の充実拡充15,370中体連以外の大会へも補助金支出
街路(防犯)灯のLED化新規8,000町管理全灯LED化(28年度は調査)

ご覧の通り、各種助成が充実しました。

特に要望や意見の多かった「すくすくこども券」は1枚当たりの額面が500円になり、使い勝手がよくなります。
また、ワクチン助成の大幅拡充や教科書費助成、給食費軽減など子育て世帯の負担はずいぶん軽くなっており、何かと物入りの世帯にとってありがたい内容になったのではないかと思います。

ふるさと納税とは関係ありませんが、街路灯も環境省関連の予算を活用してLED化が進む予定です。
自治会で負担の大きかった電気料金の大幅な縮小が見込まれます。

ところが、ひとつ気になっていることがあります。
小中学生全員へのタブレット導入です。

タブレット導入の方法は適切か?


子育て世帯への負担軽減はわかるのですが、肝心の教育行政をどうするのか。
全国でも最低レベルの教育水準である日高の教育について、すでに議会内外で議論されています。
せっかくのふるさと納税を有効に活用して少しでもよりよい教育を目指したいところです。

その目玉が校内無線LANの整備を含めたタブレット導入です。
以下がその説明になります。

ICT環境整備
児童生徒の学力の底上げを図るため、町内全小中学校のICT環境整備を実施する。
<タブレット端末の導入> 
・全児童生徒数分を整備(5年リース)
・朝学習や放課後学習を主として使用
<学校内無線LANの設置>
・全小中学校に校内無線LANを整備

これに4千万円の予算が計上されています。
(内、タブレットリース料が1千万円程度。無線LAN工事費が3千万円。)

当然ですが、タブレットを導入するだけで基礎学力があがるわけではありません。
それに、漢字や算数のドリルも同じく朝学習と放課後学習のために配布される予定なのですが、ドリルもタブレットも配ってあれもこれも活用できるのでしょうか。

活用方法を考えるための推進委員会をこれから設けるとのことですが、そもそも現場の先生方に何の相談もなく導入を決められています。
まずは配ってから「さあ、どのように活用するか考えましょう」では順序があべこべで、うまくいくとは到底思えません。
また5年間も同じタブレットを使用する計画ですが、5年後にはそのタブレットなど化石同様の代物になってしまうはずです。

個人的にはめっきり使わなくなってしまったiPad

タブレット導入自体に強く反対はしませんが、質問に対する納得のいく説明がなく、その導入方法や対象者に検討の余地があります。

タブレットよりも必要なことは?


さらに、多額の予算に対する反発として、低学年のお母さん方からは
「目が悪くなるのでは」
「まずは普通に読み書きを」
との声や、それよりも教育や子育てへの意識があまり高くない家庭向けの啓発事業教員の増員などの有効な活用を要望する意見もあります。

タブレットよりも先に、基本的な教育環境の充実現場裁量で使える予算の拡大成績上位者向けに検定などへの助成を望む声もありました。

今まで教育方針や計画の中に、タブレット導入はなかったように思います。
「ふるさと納税で使える予算があるから」と突然の思いつきのように思えてしまうのです。
教育現場や保護者の意見を反映した施策なのでしょうか。
それよりも有効なお金の使い方があるのではないでしょうか。
拙速な判断をせず、もう少し議論してもよさそうですが...みなさんのご意見を聞いていきたいと考えています。

なお、これらの予算も最終的には3月からはじまる議会で議論し、議決されていきます。


2016年2月5日金曜日

JR北海道は全路線が赤字、日高線復旧をどう考えるか?

運休中のJR日高線をめぐる問題はなかなか進展せず、むしろ8億円の追加費用が見込まれ対策費は累計38億円とされています。
昨年10月31日に開催された「JR日高線問題を考える会 in 浦河」にも伺いましたが、まだわからないことが多すぎて、いまだに考えがまとまりません。

被害状況の議員視察(豊郷・清畠間)

さてそんな中、JR北海道が全路線の営業損益や営業係数を公表しました。

- 道内全区間で赤字 JR北海道が営業係数公表(北海道新聞)


民営化後のこうした数字の公表は全国でもはじめてだとみられています。
せっかくなので確認しておきます。

※ リンク切れが予想されますので、データを転載されている旅行総合研究所タビリスの記事も紹介(輸送密度ランキング営業損失ランキング)します。

❏ 注目すべきは重要路線の多額の赤字


注目すべき点としては、従来は稼ぎ頭とみられていた札幌近郊の路線も含みすべて赤字であったことと、過疎地域よりもむしろ都市部等の重要路線の方が大きな赤字を生んでいることかと思います。

例えば、日高線は100円を稼ぐ費用に1,179円もかかっています。
周知の通り、完全な赤字です。
しかし札幌近郊でも107円の費用がかかっているのです。少額でも走れば走るほど赤字。しかも本数は日高線よりずっと多いです。
この積み重ねの結果、日高線の赤字は年間で15億円ですが、札幌近郊の赤字は26億円なのです。

ここから言える日高線沿線住民にとって大事なことは「JR北海道は営利企業だから(日高線のような)赤字ローカル線の廃止はやむなし」と言われる筋合いはないという点ではないでしょうか。

つまり、不採算路線が廃止ならば札幌圏含むすべての路線が不採算ですし、それを言うなら赤字の大きな路線から廃止しなければなりません。北海道新幹線だって当面は赤字です。
これを突き詰めて言えば、JR北海道の存在意義がなくなってしまうのです。

「どの路線も赤字ならいっそJR北海道、廃止しますか?」
そんな話にはならないはずです。
なぜかといえば、鉄道は公共財だからですよね。

同じようにJR日高線沿線の住民も「赤字だから廃止という話にはならない」と胸をはれます。
当たり前かもしれませんが、これは重要なことです。
鉄道は公共性のある事業であり、採算だけでは語れません。

❏ JR北海道はどのように赤字を補填しているか


それにしても今回あらためて不思議に感じたのは、JR北海道は巨額の赤字をどのように補完しているのかということでした。
北海道新幹線は3年間で年平均48億円の赤字と言われていますが、そもそもすでに鉄道事業で年間400億円の赤字を計上しています。

少し調べてみると数年前からJR北海道の財務について詳しく言及している方がいました。

- JR北海道とJR四国は経営自立できるか(fromFC)


詳しくはご覧になって頂きたいのですが、簡単に要約します。
JR北海道は「経営安定基金」と呼ばれる約7,000億円にのぼる基金を保有していて、主にその運用利益で赤字を補填しています。

この基金はもともと国鉄から民営化の際に「JR北海道は単独では黒字がムリだから、その資金を運用して活用してね」ということで国から預かったお金です。
1987年当時はバブル真っ最中ですから、4%の金利は当たり前だったのです。
その高金利による利息収入(300億円!)をあてにしていたのですね。

過去この基金の多くは「鉄道・運輸機構」という組織へ4%で貸付けされていました。実は今もされています。
昨今そんな金利、どこにもないですよね。見込み違いだったのです。
でも現にそんな高金利なのです。

なぜそんなことが可能なのかといえば、この組織はJR北海道の全株を保有する株主=元をたどれば国鉄=国だからです。
つまり、この信じられない金利というのは、実質的には国からの補助金です。
民営化といいつつも実質的には国営だったと指摘されています。

ところで、ここで「国営だった」と過去形なのは、この状況が変化しているのです。
10年前は5,000億円以上あった鉄道・運輸機構への貸付けは昨年度末で650億円へと激減しています。利息収入も38億円になっています。※
では、この7,000億円(現在は時価8,000億円)の基金を今はどう運用して400億円もの利益を確保しているのか。

その肝心なところはわからないままです。

何らかの投資運用で得ているようですが、いずれにせよここから言えることは、国は本格的にJR北海道に経営の自立を迫っているということです。
特別債権や助成といった別の形での補助もありますが、いずれも時限措置であり、国は徐々に手を引いているという認識で間違いなさそうです。

※ JR北海道鉄道・運輸機構の財務諸表はダウンロードできます(リンク先は2015年3月末の財務諸表)。

❏ 日本、そして地域における鉄道の公共性とは


ここまでを整理すると、矛盾があることに気づきます。
つまり、不採算事業を運用するJR北海道に自立経営が求められているという状況です。
言い換えれば、採算がとれない公共事業であるにもかかわらず、公的支援は縮小されているのです。

これは民営化の宿命なのかもしれません。
それならばJR北海道の経営努力も必要でしょう。
しかしどうあがいても赤字であり、JR北海道に別の事業の利益で補填してもらうか、国が補助するかの違いしかありません。そしてどちらも厳しいとして沿線自治体の負担を迫っています。

国の言い分をまとめると「もう鉄道は公共性が低くなってきたからお金出せないし、それぞれの会社で儲かるように工夫してやってほしい。それも難しいなら地域でなんとかしてよ」ということのようです。
この点を深掘りすると、私がまだ2歳(!)だった頃の国鉄民営化の話になってしまうので今はおいておきます。
とりあえずこの現状認識の上で、これからのことを考えなければなりません。

これからの時代、鉄道という公共財をどう維持していくのか。
そもそもこれからの日本において、地方において、鉄道の役割とは何なのか
そしてそのための公金支出は、現在のあり方と方向性で妥当と言えるのか
こうした根本的な問いに立ち返ってきました。

採算がとれない以上、復旧してもその維持経費はいずれにせよ将来世代の負担になります。「ないよりあったほうがいい」という話ではありません。
JR北海道や国に対して鉄道の公共性をしっかりと訴える一方、地域としても公共交通全体における鉄道の位置づけを議論する必要がありそうです。
もっと踏み込んで言えば、自分たちの地域の将来の交通のあり方はどうあるべきなのかを考えなければならないということかと思います。

なかなか難しい問題ですが、現状で自分なりに調べたことを整理しました。
みなさんの考えをお寄せ下さい。


2016年2月2日火曜日

浦河町地方創生総合戦略ついに策定、5年後の目標は?

ご報告が少し遅れましたが、1月28日(木)に両常任委員会で「浦河町地方創生総合戦略」の最終案が示されました。


議会の議決を要する案件ではないので、今回はいくつか質疑が交わされて終了です。
まだ納得のいかない点もありますが、前回の委員会で指摘した点がいくつか改善されていました。既存事業の延長線上にある目標もあれば、かなり踏み込んだ目標もあります。

町のウェブサイト上では最終案は公開されていないようですので、簡単に基本数値目標とKPI(重要業績評価指標)の一覧を転載して報告とさせていただきます。
個別事業の羅列は長すぎるので省略した点、ご了承下さい。

1.競争力のある産業振興による活力あるまちづくり 


いちご生産額:2億396万円 → 4億3,0000万円
新規雇用者数: ― → 50人
新規創業件数: ― → 10件

 (1)第一次産業の振興
① 新規就農者数:1.4人/年 → 4組/年
② 給食での地場産物利用率:33%/年 → 38%/年
③ 商品開発数:1.2件/年 → 2件/年 

(2)新たな観光産業の振興
① 地域DMOの設立:0件 → 1件
② 着地型・体験型観光による入込者数:41人/年 → 60人/年
③ 着地型・体験型観光参加者リピート率:30%/年 → 45%/年 

(3)浦河産品の付加価値向上と消費拡大
① 地域優良品認証数: ― 件/年 → 10件/年
② 商品開発数:1.2件/年 → 2件/年 

(4)人材・後継者の育成
① 新規就農者数:1.4組/年 → 4組/年
② 新規就漁者数:2人/年 → 5人/年

(5)創業・起業支援と雇用の拡充
① 新規創業件数: ― → 2件/年
② 新規雇用者数: ― → 5人/年

2.潜在価値と魅力を活かした選ばれるまちづくり


転入者数:715人 → 950人
交流人口数:3,324人 → 5,000人

(1)移住・二地域居住の促進
① うらかわ生活体験滞在延日数:3,617日/年 → 4,654日/年
② 移住者数:11.4人/年 → 17人/年

(2)交流人口の増加促進
① 合宿入込数:2,635人/年 → 4,000人/年
② 外国人宿泊客数:253人/年 → 380人/年

(3)体験交流人口の増加促進
① 農林漁家民泊者数:267人/年 → 300人/年
② 乗馬療育利用者数:407人/年 → 620人/年

(4)浦河応援団の獲得
① ふるさと納税額:2,725千円/年 → 300,000千円/年
② ふるさと住民票登録者数: ― → 60人/年

3.子育て世代を支える優しいまちづくり


出生者数:106人/年 → 80人/年
合計特殊出生率:1.33 → 1.40
子育て環境に関する満足度:33% → 60%
教育に関する満足度:47% → 70%

(1)結婚・定住支援の拡充
① 年間結婚数:145件/年 → 130件/年
② 新規雇用者数: ― → 5人/年

(2)子育て支援の充実
① 子育て相談支援事業利用者数:4,318人/年 → 4,500人/年
② 子育て支援住宅建築数: ― → 6戸

(3)仕事と子育てが両立できる環境づくり
① 延長保育利用者延数:568人/年 → 693人/年
② 放課後児童保育利用者延数:21,936人/年 → 22,000人/年

(4)教育の充実
① 全国学力・学習状況調査:全道平均点以下 → 全道平均点以上

4.安心と連携で支えるまちづくり


社会減少数(転出-転入):156人 → 115人以下
暮らしやすい町に関する満足度:28% → 60%
町民活動に関する満足度:18% → 40%
広域連携に関する満足度:14% → 30%

(1)安心な暮らしの確保
① 介護施設新規雇用者数: ― → 2人/年
② 街路灯のLED化率:4.9% → 100%

(2)資源の有効利用と環境にやさしい地域づくり
① 空き家利活用率: ― → 30%
② オフセット・クレジット販売量:44t/co2/年 → 66t/co2/年

(3)地域情報化の推進
① Wi-Fiステーション新規設置数: ― → 20件/年

(4)まちづくりへの住民参加の促進
① 若者によるまちづくり提言の実現: ― → 1件/年

(5)広域的な地域間連携の促進
① 地域間連携事業による交流人数: ― → 100人/年

【留意事項】
1.各自治体ごとに数値目標の設定と達成努力が国より課せられています。
2.基準数値はおおむね平成26年であり、目標は平成31年におけるものです。
3.基準数値のないものは新規事業ないし新規の統計把握によるものです。