2016年5月15日日曜日

運休から1年半のJR日高線。国会で議論されるも国は現状容認


5月13日(金)の衆議院国土交通委員会にて畠山和也委員(日本共産党)が現在運休中のJR日高線について質問をされていたようです。
映像はこちらからご覧になれますが、関心も高いと思いますのでやりとりを書き起こしてみました。
なお公式な議事録ではありませんので、一字一句まで正確とは言えない点ご了承下さい。


代行バスは妥当な運行状況か


(畠山和也委員)
JR日高線の不通区間は116kmに及び、これは東京-熱海間を超える長い区間です。他に100キロを超える長距離の代行バスの事例はあるのか。
現状をやむなしと思っているのか、認識は。
 
(藤田耕三鉄道局長)
代行バスは鵡川-静内間の51kmと静内-様似間の64kmの二系統で運行され、計116km。
これまで常磐線の竜田-原ノ町間の46kmが最長で、100kmを超える代行バスはない。
運行に関して、高校生の登下校時間に合わせたり、運行系統を見直したりと、JR北海道はできる限りの努力をしていると認識している。

(畠山委員)
実態をよくみてほしい。
北海道だから冬道、悪天候もある。
国道から離れて駅前まで細い道にも入る。
これにより、所要時間にも影響がある。
例えば1時間10分だった鵡川-静内間は現在1時間48分かかっており、鉄道の1.5倍くらい。高校生の部活動や塾、講習にも制約が生じている。

それから深刻なのは、車いすの方の話。
代行バス乗車のために、一カ月前の予約が必要だと言われている。
JR北海道によると介護事業者へ介助依頼が必要とのことだが、ご本人が通う病院の担当は専門医であり、一ヶ月前の予約は確定できない。

また、代行バス内ではお金を取り扱っていない。
そのためバス停と離れた駅舎へ切符代を払いに行く不便がある上、観光客はこうした仕組みはわからない

公共交通として法に定められた国の責任は


色々言ったが、一体これで公共交通の機能を果たしていると言えるのか。
ここで交通政策基本法を確認したい。
第16条、第17条を読み上げて下さい。

(藤田局長)
(日常生活等に必要不可欠な交通手段の確保等)
第十六条  国は、国民が日常生活及び社会生活を営むに当たって必要不可欠な通勤、通学、通院その他の人又は物の移動を円滑に行うことができるようにするため、離島に係る交通事情その他地域における自然的経済的社会的諸条件に配慮しつつ、交通手段の確保その他必要な施策を講ずるものとする

(高齢者、障害者、妊産婦等の円滑な移動のための施策)
第十七条  国は、高齢者、障害者、妊産婦その他の者で日常生活又は社会生活に身体の機能上の制限を受けるもの及び乳幼児を同伴する者が日常生活及び社会生活を営むに当たり円滑に移動することができるようにするため、自動車、鉄道車両、船舶及び航空機、旅客施設、道路並びに駐車場に係る構造及び設備の改善の推進その他必要な施策を講ずるものとする。

(畠山委員)
そこで、石井大臣に問います。
読み上げられた法の内容は、先ほど紹介した実態と乖離しているのではないか。

(石井啓一国土交通大臣)
昨年より復旧方針を北海道、JR北海道、国交省の三者会議にて検討中。
また交通手段の当面の確保のためJR北海道が代行バスを運行している。
この措置は交通政策基本法の考え方に沿ったものであると考えている。

(畠山委員)
そうなっていない現状を紹介したわけです。
国が主語になっているではないか。
いつまでも代行バスに頼るのではなく、国が責任を持って日高本線の復旧を行うと明言すべき

(石井大臣)
三者会議で復旧にかかる多額費用の負担について議論し、JR北海道と自治体との間で持続的な運用方法も協議中。
国交省としては、協議の場を通じてそれぞれ何ができるのか議論を深め、関係者の調整が促進されるよう努める

(畠山委員)
「調整に努める」と今まで何度も聞いてきたが、しかしまもなく1年半になる。
復旧の方針さえ決まらず、JR北海道も今後の経営が見通せない。
国の責任を問うべき段階ではないか。

国鉄の分割民営化の再検証は


矛盾があるのはそもそも国鉄民営化が原因と考える。
国鉄分割民営化から今年で29年。
民営化の際には、このような附帯決議が付されている。

二、各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社の輸送の安全の確保及び災害の防止のための施設の整備・維持、水害・雪害等による災害復旧に必要な資金の確保について特別の配慮を行うこと。

ここで民営化についての国の認識を問いたい。
JR北海道の経営内容についても問わなければならないが、現状のような赤字路線を抱える困難も見通せていたはずである中、あらためて国の責任も問われるべき

(石井大臣)
国鉄の一元的な経営をあらため、健全な経営基盤を確立するのが民営化の趣旨
約30年経過し、人口減少や道路の整備進展など事情の変化も踏まえながら、引き続き国鉄改革の趣旨に沿って必要な支援をとっていく。

(畠山委員)
今、手元に民営化の際の自民党の広告がある。

1986年5月22日朝日新聞(17面)に掲載のものと思われます

全国画一からローカル優先のサービスに徹します」とある。
地元自治体も住民も受け身ではなく、利用促進策に知恵を絞っている。
今度はJRや国が応える番ではないのか。なぜ新幹線ばかりで、在来線支援の旗を振らないのか。
JR北海道に矛盾が噴出しているのは、根本的に民営化に端を発するもの。
そろそろ検証が必要な時期を迎えているのではないか。

(石井大臣)
分割民営化によって効率的で責任ある経営が実施できている。
信頼や快適性は格段に向上。
経営面もJR本州三社は自立、そしてJR九州も上場に向けて順調に推移。
一方、JR北海道、JR四国、JR貨物の三社については自立化できる状態にない
今まで経営安定基金の積み増し、設備投資助成、無利子貸付といった措置を通じて着実に取り組んできた。

(畠山委員)
これまでやってきたとはいえ、ますます大変になるのではないか。
減便、駅の廃止に直結する。
当時からも民営化でバラ色になると喧伝されてきたが、しかしJR北海道の現状をみて胸をはれるかといえば決してそんなことはない。

JRを守りもしないで何が地方創生かという声もある。
あらためて分割民営化について再検証することを求めて終わります。