2015年12月26日土曜日

旧野深小学校跡地はサービス付高齢者住宅に?(2)

先日12月25日(金)、今年最後になる総務産業建設常任委員会を傍聴してきました。
議案は3件でしたが、今回は先日の投稿のあと町内外の方々からご意見いただいた旧野深小学校跡地プロポーザルについてあらためてとりあげます。

野深小では2頭のポニーが飼われていました

❏ 委員会では議論を終え本会議へ


今回は町の説明に大きな変更はなかったのですが、当初10年間としていた事業内容の変更や譲渡等の禁止を20年間に延長する契約とする旨の報告がありました。

委員会としては町内にサービス付き高齢者向け住宅は確かに必要であり、雇用も生まれる見込みであることから理解を示す結果(内一名は明確に反対)となりました。
なので、このまま来月の臨時議会で可否を決めることになります。

どう判断すべきなのか迷いもしたのですが、私としては現時点では下記の点から募集のやり直しをすべきと考えています。

❏ 募集要項の問題点。契約不履行の場合は?


前回も述べたように結果としては良い案がでてきて、その内容については特に不満はありません。
でもこのまま決めてしまっていいのかなと単純に思うわけです。
一連の議論の中で、募集要項自体の問題点がわかってきました。

「わざわざ高額の参考価格を書いてなるべく応募してこないようにしたんじゃないか」
「そんなにサービス付き高齢者向け住宅が必要と言うなら最初から目的を限定して募集すればよかったのに」

そのような反発の声とともに、参考価格と購入希望価格のあまりの差にびっくりした町民から「内々に決まってたんじゃないか」と疑われるということは、そもそもすすめ方や募集要項に問題があったということだと思います。
少なくともそう疑わざるを得ない内容だったという事実を指摘しておきます。

金額を重視するなら最低価格も明記すべきですし(今回は実質上0円)、地域課題の解決を重視するなら価格にこだわらず広く目的を明示して良質な運営案を募るべき(にもかかわらずあえて高額の参考価格掲示)です。
このあたりの町の姿勢がかなり曖昧であり、「総合的な判断」をするという「身内の論理」が入り込みやすい余地がありました。

審査委員も公表されませんでした。
これに関連して、他の自治体のプロポーザルではよくある応募者と選考関係者の必要以上の接触を防ぐための「接触の禁止」という項目があるのですが、今回の要項にはありませんでした。

そして私が特に現実的に問題だと考えているのは、契約不履行の際の措置です。
購入金額の100分の30の違約金を支払うこととなっています。
500万円での購入であれば150万円ですね。

契約には20年間(当初の10年間から延長)は提案書の通り事業をすることや第三者へ所有権譲渡の禁止等が盛り込まれますが、それに違反をした場合の違約金が150万円なのです。
要するに150万円さえ払えばこの物件をいかようにもできる状況です。
万が一、経営がうまくいかなかった場合も同様です。

この条件では明らかにリスク管理として不十分であり、町有財産の処分としても、野深地域のエリアマネジメントとしても無責任な契約内容ではないでしょうか。
何か約束と違うことがあっても「違約金を払えとしか町としては言えません」となるわけです。

❏ 行政への不信感という現実


こうしたことは疑い始めればキリがありませんが、これもまた余計な詮索を生むような条件になってしまっています。
購入金額が安ければ安いほど違約金も安くなるわけですから。

町は「問題はなかった」と説明していますが、一般の町民の感覚からみるとどうでしょう。
募集の時は私も気づかなくて不勉強でしたが、あとからみるとあれこれと突っ込みどころがあります。
その募集要項自体が実は新ひだか町とほぼ同じである点も気になります。6件もの廃校跡地の活用が決まっていない町の文面が、参考にすべき対象として適当でしょうか。

予期していなかった問題点であるならば、ここは一度立ち止まって考えなおすべきです。

今回の結果に限らずなのですが、浦河町民の間には行政に対して大きな不信感があるのが現実です。
実際に何らかの不正があったかどうかということではなく、結果としてそう疑われていることが問題であり、このまま決まると町民から購入者や関係者への無用なわだかまりが残ってしまう心配もあります。

以上の点から、きちんと募集要項の要件を見直して問題点を認め、誠実に公募のやり直しをすべきです。

よくある問題ではありますが、焦って結論を出して町への信用を毀損するよりも、ここはひとつ長期的な視点で町民と行政の信頼関係を丁寧につくっていくべきではないでしょうか。

❏ この一件を通じて感じたこと


廃校利用や公募型プロポーザルについて調べたりお話を伺ったりすると、これだけでも全国で本当にたくさんの問題があるようです。

北海道庁が今年まとめた廃校活用促進のための資料(「地域と心をつなごう北海道での新ビジネス」)をみると、少なくとも道内に44件の未利用廃校があり、無償譲渡でも活用が決まっていない物件もあります。
浦河の場合はそれなりに新しい校舎であり耐震工事も必要ない点は一定の評価はされるかもしれませんが、市場価値はどれだけあるのかあらためて考えさせられました。

さらに公募での売却が望ましいのかどうかも本来は地域住民ともう少し時間をかけて議論すべきだったようにも思いました。
過ぎたことかもしれませんが、小学校という地域社会の拠点の跡地をどうするかは将来の地域のあり方に関わる話ですので、「PTAや住民から何も活用案が出てこなかった」と終わるのではなく、もう少し丁寧に進めた方が良さそうです。

また、今回の件を通じて町民の行政への不信感をあらためて感じました。
根本的な解決のためには、情報公開を含むコミュニケーションの仕組みづくりを考える必要がありそうです。
このブログも微力ながら貢献したいと思っています。