2018年7月16日月曜日

34年ぶりの人口増!自治体がつくる日本一の子どもの遊び場と住宅政策

34年ぶりに人口増加を記録した空知管内秩父別町
増加したとはいえ、2,436人(2018年1月現在)の小さなまちです。

その秩父別町が自治体自ら巨大な遊び場を整備したと伺い、仲間と一緒にお邪魔してきました。

浦河からざっと300km、旭川と留萌の真ん中くらいにあります

北海道中から人を集める子どものための屋内遊技場


どんな施設なのか、写真を中心にご紹介します。

平成29年4月オープンの屋内遊技場「キッズスクエアちっくる」

道の駅や体育館、図書館、博物館、キャンプ場などが一体となった中心部の一角にあり好立地。

受付画面で早速入力「家族8名、全員おとな」

受付には職員が常駐し、人数カウントも子どもが喜んで押してくれそうな画面で対応。


中に入るとネット遊具がどーん

メインのネット遊具は2層になっており、地上と合わせると都合三階建てを行き来できます。
奥に滑り台や子供向けのボルダリング、自動販売機付きの休憩所もあります。

スーツ姿のおじさん達も混ぜてもらいました。怖くないよ

スーツ姿のおじさん達も童心に帰って「うへー!」「歩きづらい!」と少し汗の滲むくらいの運動になりました。

この施設、昨年の一年間でなんと8万人が利用しました。
秩父別の住民は2,500人ほどです。
近隣の旭川や深川、さらには札幌からもたくさん来てくれているようです。

隣接する道の駅(温泉も併設)やキャンプ場も利用者が増え、食堂は手一杯で何らかの手を打たなければならないという嬉しい悲鳴もあるようです。

さらなる一手、国内最大の屋外遊技場をオープン


秩父別はここで止まりません。
今年2018年7月に、この施設の裏に屋外遊具もつくりました。

日本一のキュービックコネクション(高さ13m)

早速我々も遊んでみます。

スーツ姿で果敢に挑戦

ちょっと見づらいですが、ただ登るだけではなくて随所にポールや滑り台、休憩スペースなど様々な遊具があります。

最上段はかなりの高さです

写真はプライバシーも配慮して載せませんが、平日の4時頃にもかかわらず近隣の市町村から10~20人くらいの子どもたちがお母さんに連れられて遊びに来ていました。

こちらはオープンしたばかりですし、人数がカウントできません。
が、先の「ちっくる」で数えた限りでは、オープン直後の日曜日は1日だけで1,000人の入場があったようです。

浮かせた財源を人口減対策として子育て支援へ


秩父別町はどのような経緯でつくることになったのでしょうか。

神藪町長にお話を伺うと、就任してからの約10年間で財政健全化に取り組んできたそうです。
町債(借金)を10億円ほど返し、逆に基金残高(貯金)を10億円ほど積み上げました。
実質20億円分の余裕を生んだ計算になります。
これにより生まれた財源を人口減対策として、子育て環境の充実に投入します。

他の自治体でも実施しているような各種子育て補助メニューの充実に努めます。
また後ほど紹介する住宅政策も手がけます。

「いずれは遊び場をつくってあげたかった」と語る神藪町長。
まわりがみんな週末になると、子どもや孫を近くにある旭川のカムイの杜公園に連れて遊びに行ってしまう。
ああいう目一杯子どもが遊べる環境をつくってあげたい。
勉強よりも何よりも、子どもはまず遊ぶことが一番大事だ。
こういう田舎町で半端なことをやっても誰も着目してくれない。

というわけで、屋外施設4億円、屋内施設6億円、総額10億円の遊び場ができました。
財源は全額過疎債で、実質自治体負担は3割(3億円)です。
運営は振興公社が担い、指定管理料は双方合わせて1,100万円/年と伺いました。

遊び場を自治体自らが力をいれて整備する事例というのはあまりありません。
実際に大勢の子ども達とお父さんお母さんのみならず、元気な祖父母まで道内各地から遊びに来ています。
ただの遊具=遊び場を超えて、多世代の集客施設になっていることに注目です。

着実に需要に応える住宅・宅地政策


冒頭でも書いたとおり、たった3人ではありますが、人口増を実現した秩父別町。
住宅・宅地政策も注目です。こちらは直接現地を見たわけではない旨、ご了承ください。

7/16付の道新記事にも社会増事例として紹介されていました

2010年に話題となった「1円宅地」は、2016年に計38区画が完売
次の手として、昨年は民間がつくる集合住宅に補助をします。

自治体が公営住宅をつくると法律で家賃が決まってしまいます。
すると、まともな収入のある世帯の家賃は8万円/月くらいになることもあります。

秩父別は、2棟12戸を建設する民間業者に4,800万円(1戸あたり400万円)を補助しました。そのかわり家賃の上限を5万円にしてもらうなど、若い世代が住みやすい住宅を民間の力を借りながら実現したようです。

田舎のまちの人口減少対策で、課題になるのが住宅供給。
明らかに需要があるにもかかわらず、単純に住む家がなかったり、仲介してくれる不動産会社がなかったりします。
実際にただ住宅をつくっただけで、町外に住みながら勤める方が住所を移していらっしゃるようです。

参考までに、昨年浦河でつくった子育て支援住宅は、たった1戸の建設費で2,000万円くらいかかっています。
目的と期待される成果にもよりますが、費用対効果も優れているように思います。

いずれにせよ、こうした着実な取り組みの上での思い切った政策として屋内外遊具があることを忘れてはならないと感じた視察でした。