前に報告した議員定数削減調査特別委員会で、「まずは浦河町議会として議会や議員の役割について学び、基本認識を共有しよう」ということで企画されたものです。
講師に北海道町村議会議長会参与(元事務局長)の勢籏了三先生をお招きし、「議員定数・議員報酬と議会改革の行方」という題でお話いただきました。
以下、私が大事だと思う点を中心に抜粋して補足しながらお伝えします。
全道の町村議会に詳しい勢籏先生 |
❏ そもそも議員とは、議会とは?
そもそもなのですが、地方議員とは何でしょう。
実は議員についての説明は、地方自治の基本法である「地方自治法」には書かれていないそうで。ちょっとびっくりですよね。
他の法律でも議会の議員は「選挙で選ばれる特別職地方公務員」ということくらいしか書かれていないんです。
つまり法律上、議員は議会に出る職業のことです。
では議会では何をするのかというと、こちらのほうは色々と書かれているのですが、主に「議決」をします。
議会で議決をする人たちが議員です。
では議決とは何でしょうか。
これを説明するためには首長の話をしなければなりません。
選挙で選んだ首長が持つ「執行権」は非常に強いもので、ある程度のことはどんどん決めて実施できてしまいます。
国会は議員の中から代表(首相)を選ぶ「議院内閣制」なので、どちらかと言えば議会みんなで議論しながら決めていくという性格が強いです。
しかし、地方自治体は議員も首長も住民が選ぶ「二元代表制」といって、強いリーダーシップを持つトップが行政を牽引するイメージです。大統領制もこちらです。
でもそれが行き過ぎると困りますね。
そこで、首長の考える計画で良いのかを議論して最終的に決める権利を住民はもっています。その権利がつまり「議決権」であり、住民の代表である議会(議員)に委ねられています。
これが行政のチェック機能と呼ばれる地方議会の役割ですね。
(かなりざっくりとした説明ですので、ご了承下さい。)
❏ 高まる議会改革の気運
ところが昨今、地方議会について様々な問題点が指摘されてきています。
- 「口利きや選挙違反など不祥事が多い」
- 「男女比や年齢など議会構成がいびつ」
- 「監視の役割が機能してない」
- 「閉鎖的で活動が不透明」
こうした点から議会とは何かがあらためて問われはじめ、住民自治の気運の高まりの中、いわゆる「議会改革」が叫ばれるようになりました。
栗山町を嚆矢とするその議会改革の中身とは、次のような内容でした。
<栗山町の議会改革の四本柱>
- 議会報告会の実施
- 議員同士の議論
- 町民の声の反映
- 首長の反問権
多様な意見がある町民の声を丁寧に聞き取りきちんと行政に届ける一方、首長に反問権も与えたことで自分たちも責任ある発言を心がけ、より中身のある議論を可能にしたということかと思います。
2に議員同士の議論とあります。
議員同士は議論をしないのかと疑問に思われるかもしれませんが、議会(委員会)は基本的には行政の提案に対してそれぞれの議員が質問したり、意見する場なのです。
これでは一方的な発言にとどまり、議論が深まる仕組みになっていないのです。
おときた駿都議会議員のこちらの記事がわかりやすいです。
- 議会が「議員同士で議論をする場に変わるべき」なのは、ずばり人口減少社会だからである?!
4の反問権というのは、議員の意見や提案に対して首長が逆に質問を切り返せる権限のことで、一般的な議会では許されていません。
それくらい首長の執行権は強いと考えられていますので、これを認めるということは自分たちも意見するからには相応の勉強をして望む覚悟があるという意思表明でもあるでしょう。
この全国的にも話題になった栗山町議会基本条例制定に至るまでの議会改革。
真似をする議会もかなり増えましたが、栗山以外では実際にはあまりうまくいっていないのが現実のようです。
議会としてきちんとそのあり方を議論せず、条例という形だけを採用しているのがその理由とのことです。
❏ 勢籏先生の考えと提案
以上ほんの一部しか紹介できませんでしたが、議会改革を考える上で必要な議会の法的根拠と今までの議論の経緯を詳しくお話いただきました。
その上で勢籏先生の考え方も随所に示されていました。
私なりに簡単にまとめると、「栗山町のような住民から信頼される議会を目指すべき。実現するためには、議員の時間も手間もかかるため定数も報酬も下げるべきではない」という考えでした。
また、時々みかける議会の役割として「政策立案」がありますが、あくまで本来の役割である「行政監視」が一番大事であると強調され、議会を変える具体的な手法としては「通年議会」をおすすめされていました。
これにより、通常は首長にある議会の招集権を議員にも与えて、事後報告である専決処分を減らすべきとのことでした。
専決処分が「急だったので議会にかける時間がなかった」と方便に使われることが多いようです。
❏ 通年議会のデメリット、会派制の意義
講話の後に質疑の時間もいただいたのですが、佐藤議員からこの通年議会のデメリットについて質問がありました。
答えとしては「あまりないと思うが、本会議を重要視しすぎると結果として常任委員会の役割が低下するかもしれない。また議員の私生活がかなり制約される可能性がある」とのことでした。
浦河町では、それなりに頻繁に委員会で個別事業について説明はされており、首長による強引な専決処分がそれほどあるとは思えず、通年議会の提案は私にはあまりピンときませんでした。
私からは会派制の意義についてお聞きしました。
「議会での個々議員の意思表明について町民から聞かれたときに「会派で決めたから」と逃げ道に利用される場合もあるのでは」との質問でしたが、「北海道内では浦河町以外に10町村ほどが会派制を採用しているが、必要性がある場合もあると思う。逆に議会の発信力が不足しているのではないか」とご指摘いただきました。
10町村くらいしか会派制がないならば、ますます必要性がよくわかりませんが...。
具体的には議会だよりの配布を議員が手分けして直接配る方法が提案されました。7,000世帯を18人で回るのが現実的かどうかわかりませんが、よい手立てかもしれませんね。
❏ 浦河町の議会はどうあるべきか
さて、この講演は講演として、浦河はどうしていけばよいでしょうか。
議員定数については前回も述べましたが、昨年の無投票の結果を受けてまずは議会として責任を負う意味で削減が必要だと思います。
その上で、議会や議員の役割を浦河町でしっかり位置づける必要があります。
報酬をあげて立候補者が現れた自治体はまだありません。
これはやはり議員の仕事が明文化されていないことにも要因があるのではないでしょうか。
「仕事がどうかわからないあれもこれもやらされそう。あれこれ言われて面倒くさそう。しかも言いたい意見も言えなさそう」と思ったら、普通の若い人はやらないのではないでしょうか。
そして実際にそう思われています。
成功したと言われる栗山町議会でさえ、若い人や女性がでてきているわけでは全然ありません。
市町村ごとに議会のあり方は違いますから、浦河モデルをこれから独自につくることもできるはずです。
よく「議員になったってことは骨を埋めるんだね」と死ぬまでの名誉職を前提にしたような言い方をされることもあるのですが、そういう考え方をすっかりやめてしまうこともできます。
そんな常識はただの思い込みで、法律のどこにも書いていないのです。
例えば、4年ごとに様々な町民がどんどん入れ替わっていく議会はどうでしょう。
そうすれば、行政がどう物事を考えて仕事を進めているかわかるひとが町民の中にたくさんいるまちになります。
いわゆる行政用語の「翻訳者」が増えたり、町政に関心をもったり理解する町民も増えるはずです。経験者が増えればどれくらいの報酬が妥当なのかも自分たちでわかってくるのではないでしょうか。
それぞれが普通の一町民感覚で議会でものを言い、わかりづらい説明があるときはわかりやすい説明をするよう行政に求めればよいのです。
納税者たる町民にわかりやすいように説明するのは、本来は彼らの仕事です。
そんな風に行政の仕事をもっと身近に感じてもらえれば、一生懸命やっている役場職員も働きやすくなるのにと思います。
これは一例ですが、みなさんはどういう議会がいいと思いますか?