なお、あらかじめ町に提出していた発言要旨はこちらを参照下さい。
❏ 従来の観光振興の問題点
浦河町に限らず従来の観光振興といえば、漠然とパンフレットをつくり「イベントやPRをしてわが町に来てもらえればいい」という程度の考えでした。
報告としても「◯◯人が来てくれました」「☓☓でPRしてきました」というものなり、実際にそれが何のために実施され、何をもって成果とするのか、という点はないがしろにされてきました。
これは観光業、運輸業、宿泊業といったごく一部の利害関係者が主体となって「物見遊山的な周遊型の団体客」を想定していた時代の名残であり、なかなか一般の住人にとっては馴染みがなく、関心が薄いものです。
そればかりかむしろ、いわゆる「観光地」として成功すればするほど、普段の一般住民の生活に支障が出て「観光は迷惑」というケースや、一時期の大規模開発の不良債権化が地域の重荷になっているケースもあります。
❏ 浦河町が考えるこれからの観光のあり方
全国的にこうした行政の観光振興のあり方が問題視されています。
また「体験交流など特定の目的をもった滞在型の個人客」が多くなっている現状において、「観光地経営/観光まちづくり」といった視点から見直す動きが加速しています。
よそからいかに来てもらうかだけでなく、「行きたいと思えるような地域をいかにつくっていくか」という視点です。
今回の答弁では、まさに今までの観光のあり方を抜本的にとらえなおして脱却していくという強い意志を示す答えを頂いたものと受け取りました。
簡単にまとめると、観光産業は一部の事業者のものではなく、自然や文化、生活等、住民にとっては当たり前になっていて気づいていない魅力や価値を提供するものととらえなおし、観光を手段としながら地域全体で稼いでいけるまちづくりを目指すものです。
サラブレッドがこれだけ身近な風景は日高だけ |
これからの浦河の観光のあり方にとって重要な点として、下記の三点が示されました。
1.マーケティングにもとづく観光戦略
2.まちの総合商社体制の整備
3.人口減少でも稼げるまちを目指す観光振興
今までほとんど調査されてこなかった観光による経済効果の詳しい検証や、市場調査やニーズ調査がこれからは必要であるとの認識です。
これは地域の外の人から「価値」だと感じてもらえるものを守り、つくり、育て、その価値に対して適正な金額を払っていただく仕組みをつくっていく第一歩です。
また、町単独での取り組みが困難な道外や外国人観光客へのアプローチについては、近隣町村との連携を強化していきます。
将来的には地域全体のマーケティングやマネジメントを行う日本版DMOと呼ばれる組織の立ち上げも視野に入れていく考えです。
❏ 具体的にどう変わっていくのか
答弁にもあったように、今は方針を明確にしただけで具体的な動きはまだまだこれからですが、大きな期待を寄せるとともに今後の動きも注目していきます。
また、日本版DMOの注意点として挙げられている点ですが、補助金だよりの単なる第三セクター設立のような形では今までと変わりません。
行政の力に頼らず自分たちできちんと稼いでいこうとする主体がなければ間違いなく失敗に終わってしまうでしょう。
また、カタカナ語や専門用語がたくさんあってわかりづらそうですが、「観光客」とは要するに「よそからのお客さん」です。
そして観光まちづくりとは町民ひとりひとりが「よそからのお客さん」をもてなしたくなるようなまちをつくっていこうという考え方です。
自分ならよそからお客さんが来た時、どこを案内するだろうか?
自信をもってすすめられるほど大事にしているだろうか?
もっと楽しんでもらうためにはどうしたらよいだろうか?
そういった普段の意識の向け方や営みひとつひとつが、自分たちにとっても、よそのひとたちにとっても心地よい「観光地」をつくりあげていくものなのだと思います。
こうした普段の営みを前提として、地域が提供できる価値を専門的に考えていく組織として日本版DMOが位置づけられています。
ひとりひとりの日常生活の積み重ねと専門組織の両立を通じて「人口減少でも稼げるまち」を実現できるのではないかと考えています。