2016年9月16日金曜日

高校生の免許取得はダメ?一般質問「高校生が自ら学び、遊び、働ける環境を」原稿全文

議員になってから約一年半が経ちました。
議員としての仕事をやろうと思えば無限にあるものだと感じております。が、反面、ある程度時間を自由に使える仕事でもあります。と、こういう話をしておりますと、昆布漁師さんやいちご農家さんから「人手が足りないから来て欲しい」と頼まれるようになりました。

そういうわけで、時間の許す限りお手伝いしているのですが、現場に出て初めてみえてくることがあります。
そのひとつが浦河に足りないのは「雇用」ではなく、「労働力」だということです。
そして、それがあまり知られていませんし、それ以前に、人手さえあって家族でしっかり働けば、何とか生活していける仕事であることもあまり知られていないように思います。
これは何とかしたいものです。

そこで考えついたアイディアが、現在は高校の校則で禁止されている高校生の運転免許取得、特にバイクですが、これの許可です
そしてよくよく考えてみれば、これが許されれば、高校生にとっても、浦河町の未来にとっても非常に有益だと考えるに至りました。お金もかかりません。

前置きが長くなりましたが、今回一件目として「高校生が自ら学び、遊び、働ける環境づくりを」と題して質問いたします。

浦河の基幹産業の現場の実態


当町では例年、昆布漁が実質7月から9月にかけて行われ、いわゆるおかまわりが必要になります。浦河だと朝の5時から9時頃まで旗があがり、船が出ます。いっぱいになって戻ってくると、それを降ろして運びます。
ずいぶん重いものですが、その時間に動ける男手が特に足りなくて、助かると仰っていただきました。

また生産量日本一を達成した夏いちごですが、収穫が忙しいのはやはり7月から9月であります。一番忙しい時は深夜2時頃からはじめて9時に出荷、その後も株のメンテナンスで夕方まで作業をしています。
猫の手も借りたい一方、いちご農家は移住者が多いですから知り合いも少なく、手伝ってくれるひとを探すのも一苦労です。

浦河の夏いちごは生産量日本一

さて、こうして寝る間を惜しんで一生懸命収穫したものを選果場に送るわけですが、ご存知の通り選果場も人手不足です。農協職員が交代で徹夜で作業していると聞いています。
時間をかけるほどいちごも痛み、ハネ品が増えます。これを二次選果に回すわけですが、ここでも人が足らず、さらに傷み、規格外にもならない廃棄が増えます。
これでは農家さんの努力が水の泡です。

このように当町の基幹産業の現場では、特定の時期、時間に、集中的に、多くの労働力が不足しております。
特にいちごについては、今後新規就農も増え、一層不足するでしょう。労働力が足りないばかりに、収穫量が減少し、商品の質も劣化します。深刻な問題です。
これをどうにかできないものでしょうか。

高校生がアルバイトをしてくれれば助かる


そこでちょっと考えてみますと、この繁忙期、ちょうど夏休みの期間であります。
これは好都合です。高校生がアルバイトをしてくれれば助かります。

そこでこれが一点目の質問ですが、夏いちごの生産や昆布漁の現場において、こうした特定の時期に労働力不足の構造があると町として認識はあるでしょうか。そして夏休み中の高校生に期待する以外に、その課題解決の具体的方策は現時点で何か他にあるでしょうか。

すでに選果場には夏休み、たくさんの高校生が参加していると聞いています。
が、昆布漁にしろいちご収穫にしろ、現場は徒歩や自転車等では困難なほど中心部から離れている場合も多いです。出勤が求められる早朝は、父母の送迎は困難でしょう。もちろん、公共交通機関を利用することもできません。
しかしここで、高校生が原動機付自転車やオートバイに乗ることができれば、問題ありません。幸いこれらの免許取得は法律で16歳以上に認められております。
ところが現状、浦河高校では免許取得が原則校則で認められていません。

これが二つ目の質問ですが、浦河高校生が免許は許可されないのはなぜなのでしょうか。その経緯と背景はどのようなものでしょうか。またそれを今、町としてどう考えているでしょうか。

高校生が働けば、人手があればやっていける地域の産業を学ぶ機会になり、事業主さんにとっては不足して困っている労働力の確保にもなり、そうして稼いだお給料を地域でつかってくれれば経済への貢献にもなり、と良いこと尽くめであるにもかかわらず叶わないとすれば、町にとって大きな損失です。
部活で忙しくてバイトなんかできないという向きもあるかもしれませんが、このような状況ではむしろ部活くらいしかやることがないのが今の高校生の実態なのではないでしょうか。
私は当然、高校生の免許取得を町として認めてしかるべきだと考えるのですが、いかがでしょうか。
またよくよく考えるとメリットはそれだけではなく、他にも3点ほど考えられます。

免許取得を許可すればいくつもの副次効果が


まずは自前の通学の足の確保と財政負担の軽減です。
JR日高線が運休して一年半以上、先の台風で一層の被害が確認され、復旧はますます遠のいております。仮にこれが廃止となり、バス運行になった場合、池田北見間のふるさと銀河線の事例で申し上げますと、代行バスも当然赤字ですから、沿線自治体でそれぞれ年に1千万円程度を運行に支出しております。
そんな中請願があり、まさに議論の最中の高校通学費助成ですが、これも捻出するとなれば、他自治体の事例では200万円程度が自治体の負担となっております。財政が厳しい中、こうした負担は少ないに越したことはなく、一部でも自力で移動してもらえればありがたいですし、親の負担も減り、来るべき未来に対して先んじて手を打つことになります。

次に高校生の遊びの場の充実です。
当町は少子高齢化の影響もあり、昔に比べて高校生が友達同士で遊べる場も少なくなっています。公共交通機関が充実している都市部に比べ、はるかに自由が少ない状況に不満をもっている高校生もいます。
今、高校生はどこで遊べばいいのでしょうか。

卒業後に地域を離れる子も多いですが、こうした状況では浦河のことを聞かれても「何もないよ」と言わざるをえません。
これでは全町挙げてネガティブキャンペーンを実施してるも同様です。しかし、遊びにも自分の足で行けるようになればどうでしょうか。

当町や近隣には国内外に誇れる豊かな自然環境に恵まれておりますが、徒歩や自転車ではアクセスしづらい場所ばかりです。高校を卒業して地域を離れる前に、こうした浦河のいいところに少しでも接してもらい、地域への愛着が湧く出身者を増やすことにつながります。

これがメリットの三点目ですが、もっと多くの浦河出身者に浦河をPRする応援団になってもらえる可能性を指摘しておきます。
高校生の頃から自由自在に浦河を遊びきってもらう。
このまちに住む豊かさを知ってもらう。
そして卒業しても「浦河はこれだけいいとこなんだよ」と胸を張って断言できる、そういう卒業生を育んでいきたいではありませんか。それが地域の外で浦河を勝手にPRしてくれる応援団をつくることになるのです。

このようにバイク保有の自由化は、都市部に比べてそのメリットは大きいと考えます。
あらためて列挙すれば、高校生の地域産業の学び、地域の労働力の確保、地域経済の活性化、それから、通学の足の確保と財政負担軽減、遊びの場の充実、浦河をPRする応援団の可能性、これだけあります。

バイクがダメになった背景と全国の現状


かつて、高校生に免許をとらせない、かわせない、運転させないという「三ない運動」というものがあったそうです。子どもの安全を心配する父兄の当然の声の結果です。
しかし、これも地域の実情に応じて見直すべきという時代になってきています。
2012年、全国高等学校PTA連合会は、これまで続けてきた三ない運動の決議や宣言を完全に撤回し、地域の実状に応じた高校への運転者教育の受け入れを掲げました

ここに公益財団法人日本自動車教育振興財団が調査した昨年の資料があります。高校生にあたる16歳から18歳の年齢における、都道府県別の免許保有率が算出されています。
1位の和歌山県の免許保有率は、26%です。実に3割が免許を持っている。
2位は鹿児島で24%、和歌山県、沖縄県、茨城県と続いてそれぞれ約17%。それに比べてやはり大都市東京はどうかといえば、6.4%と非常に少ないです。
では、北海道はどうか。

4.4%と全国最低の水準です。全国平均すら10%ある日本の現状です。
これだけ広大な土地を有する北海道でなぜこれだけ認められていないのか。
ちょっとこれは、逆に不自然、不可思議です。

三点目の質問ですが、免許取得やバイク通学について、地域の実状に合わせた判断をすべきとの声も高まっていますが、当町としてはどう考えているのか。都市部に比べても、許可によるメリットは大きいのではないでしょうか。

四点目として、公共交通の視点からみても、JR日高線の復旧問題や通学費助成の請願、デマンドバス等、浦河町内外を取り巻く現状を踏まえれば、高校生が自ら交通手段を確保することも一つの解決方法ではないでしょうか。 

究極は、町として子どもにどう育ってほしいかが問われる


最後の五点目の質問です。
免許取得は法律ですべての国民に認められている権利です。学校の校則が法律に優先している方が不自然な状況とも言えます。

もちろん父兄には安全性を心配する声も多いと思います。昔は暴走行為も多く、非行を心配する方もいらっしゃるかもしれません。しかし、もし危険なら交通安全教育を徹底し、暴走行為は取り締まれば良い。
今の浦高生が鉄パイプを片手に走り回るようにみえるでしょうか。
時代に応じて、ちょっと考えなおしてみてもいいのではないでしょうか。

浦河のような地域、車社会では、高校を卒業すればいずれにせよ交通ルールは必要不可欠な知識です。こうした高校生の運転を前提とした考えから群馬県では2014年12月、議会で交通安全対策に関する決議と交通安全条例を可決しました。

安全も大事ですが、過保護では人は育ちません。
最近の都市部の公園では、危険だからボール遊びもダメ、感染症の恐れがあるから砂場遊びもダメ、近所迷惑だから大声を出すのもダメ、危険だから遊具もダメ、では一体何ができるか教えてほしいくらいだと話題です。
それは極端としても、自分で失敗する前から何もかも禁止にしては、チャレンジする子どもがいなくなって当たり前です。
バイクを許すのか、許さないのか?

これは、自主性を大事にするのか、安全を優先するのか。子どもの自由や権利を優先するのか、大人の心配を優先するのか。 という選択です。
色々とメリットも述べましたが、究極には、これが問われる選択です。
私としては前者を優先し、子どもたちにはのびのびと育ってほしいと考えていますが、当町の教育方針としてどちらをより重視していく考えなのか伺います。